研究課題
生物の遺伝情報を担うのDNAは、絶えず損傷している。生物は遺伝情報の恒常性維持のために、複数のDNA修復機構を有すると考えられている。これまでの我々の研究においてDNA損傷修復に関与すると考えられるEndonulcease Q (EndoQ) を超好熱性アーキアより発見し、その詳細な生化学的な解析を行ってきた。本酵素については九州大学から国際特許出願を行った後、本酵素の発見とその基礎的な性質について昨年度に国際ジャーナルに論文発表を行った (Shiraishi et al., 2015)。本酵素は超好熱性アーキアから同定され、性質が調べられてきた。本酵素は生物界の一部のアーキアとごく少数のバクテリアにのみ保存されている酵素であり、その分子進化についても大変興味深い。そこで、比較解析を行うため、常温性のメタン生成アーキア由来のEndoQ の性質解析を進めることにした。そのため、Methanosarcina acetivoransの研究を精力的に行っている米国イリノイ大学 (UIUC)に滞在して研究を進めた。M. acetivorans 由来の EndoQ を精製するために、種々の発現系を構築して、条件検討を行ってきた。また、精製に取り組むのと同時に、endoQ遺伝子破壊株の作製も進めている。さらに、EndoQ が関与する修復経路を解明するために、他のタンパク質との相互作用解析も進めた。特に、超好熱性アーキア由来のEndoQとPCNAとの相互作用について調べた。PCNAはDNA代謝において広く活躍するタンパク質として知られている。解析の結果、両者は物理的に相互作用するという知見が得られた。現在、PCNA がEndoQ の活性にどのような影響を与えるのかを調べている。
2: おおむね順調に進展している
初期の成果は、論文として国際ジャーナルに発表したこと、相互作用因子として予想されたPCNAについて、実際にEndoQが相互作用するという実験データを取得したことは成果として記載できるものである。EndoQ-PCNAの相互作用については、本年度のできるだけ早い時期に論文発表を行いたいと考えている。常温性アーキア由来のEndoQの解析については、解決しなければならない問題が明白になり、それに向けて精力的に取り組んでいる。
常温性アーキア、Methanosarcina acetivorans由来のEndoQの精製を引き続き試み、酵素の基礎的性質を解析し、超好熱性アーキア由来の EndoQ の性質と詳細に比較する。またM. acetivoransのendoQ遺伝子の破壊株の作製を行い、その表現型に与える影響を観察する。EndoQとPCNAが相互作用するということが明らかになったので、現在、PCNA がEndoQ の活性にどのような影響を与えるのかを調べている最中である。また、 EndoQ-PCNA-DNA 三者複合体の構造解析を、電子顕微鏡による単粒子解析を中心に行い、3次元構造モデルを組み立てることにより、両者が具体的にどのように相互作用して、損傷塩基の認識と切断のために機能するのかを考察していきたいと考えている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Nucleic Acids Res
巻: 5 ページ: 2853-2863
10.1093/nar/gkv121