研究課題/領域番号 |
14J09392
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 まゆみ 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 6価クロム / 還元 / 土壌 / XAFS / 鉄 / フミン酸 |
研究実績の概要 |
土壌中の6価クロム(Cr(VI))の還元反応について、土壌中で主となる還元剤である2価鉄(Fe(II))と腐植物質の寄与に着目し、還元過程のプロセスを高時間分解能で解明することを目的とし、今年度は、Fe(II)試薬、腐植物質としてフミン酸標準物質を用いた実験室系(単純系)におけるCr(VI)還元プロセスの解明に焦点を絞り、研究を実施した。 Cr(VI)還元反応の高時間分解能での観測に、シンクロトロン放射光を用いたX線吸収微細構造(XAFS)法のQuick-XAFS(QXAFS)モードを適用した。これにより、Cr(VI)還元反応を30秒刻みという従来の16倍の時間分解能での測定を実現でき、速い還元反応をCr(VI)拡散直後から秒単位でリアルタイムに近い時間軸でトレースすることを可能にした。 還元剤としてFe(II)のみ、フミン酸のみ、Fe(II)とフミン酸が両方含まれる試料の3種類についてCr(VI)還元挙動の観測、比較を行った結果、Fe(II)とフミン酸を同時に適用することがCr(VI)還元反応に有効であることが明らかになった。また、Cr(VI)還元反応中に起こるFeの化学種の変化をメスバウアー分光法を用いてトレースし、Cr(VI)還元反応により生成したFe(III)は、フミン酸により出発物質と同じ化学種のFe(II)に還元されることを明らかにした。Fe(II)とフミン酸では、Cr(VI)還元反応に対し異なる寄与の仕方をし、フミン酸よりもFe(II)の直接的寄与の方が大きいことが明らかになった。一方で、フミン酸は、Fe(II)再生能力を持ち、Cr(VI)還元反応中に生成したFe(III)を出発物質と同じFe(II)に再生する、すなわち、フミン酸はFe(II)によるCr(VI)還元反応の促進剤として機能していることを明らかにした(Hori et al., 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QXAFS法を用いて、これまでにない高時間分解能で速いCr(VI)の還元反応の観測を達成できた。また、Fe(II)とフミン酸によるCr(VI)還元プロセスを明らかにでき、この研究成果を国際誌に公表した。以上のことより、研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実際の土壌におけるCr(VI)還元反応の観測を行い、土壌pH、腐植物質の有無やその含有量等、土壌に対して細かく評価を行い、還元プロセスを評価する。Cr(VI)の人為的汚染が少ないとされる土壌を国内の複数の地点(主に、山間部、離島など)で採取を実施する予定である。土壌中Cr(VI)拡散初期の還元挙動が明らかになることで、Cr(VI)汚染土壌の修復法を導けると考えられる。また、得られた結果を国際誌に公表および関連する学会にて発表を行い、議論を深める。
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