研究課題
地上VLF波動とVan Allen Probesの波動データの同時観測データの解析から、地上-衛星で観測される波動の強度変調や周波数が一致しない場合が大部分であることがわかった。これは、地上に到達できるVLF波動が必ずしもVan Allen Probes衛星で観測されているものではないことと、Van Allen Probes衛星で観測されたVLF波動が、電離圏の影響により地上に到達できないことが原因として考えられる。コーラス波動によるピッチ角散乱は、放射線帯に存在する相対論的電子のみではなく、ディフューズオーロラ・脈動オーロラの発光を担う数keV程度の電子にも効率的に働く事が知られている。本研究では、南極昭和基地や北アメリカ大陸に展開された全天オーロライメージャデータと、低高度(~600km)を飛翔し1MeV電子の降込みを計測しているSAMPEX衛星のデータを組み合わせて、オーロラに伴うMeV電子降込みに関する調査を行った。2006年から2009年の期間で、相対論的電子の降込みに対応したディフューズオーロラ・脈動オーロラの発光が39例見つかった。これらのイベントはいずれも磁気嵐中などの放射線帯外帯が大きく変動する時に観測されやすい事がわかった。MeV電子の降込みが起こる条件としての磁気嵐の重要性を調べるために、磁気嵐中のサブストームと孤立したサブストーム時におけるMeV電子降込みの発生頻度の違いを調査した。その結果、MeV電子降込みは、孤立したサブストームに比べ、磁気嵐中のサブストームに頻繁に観測される事がわかり、MeV電子降込みにはサブストームだけではなく、磁気嵐中という条件が必要である事がわかった。
2: おおむね順調に進展している
今年度予定していたホイッスラーモード波動の伝搬特性の解析は遅れているものの、降下電子とオーロラの同時観測データの解析から大きな成果が得られ、次年度の予定課題をおおむね達成しつつあるため。
観測の制約により、ホイッスラーモード波動の伝搬特性を、地上と人工衛星の同時観測から議論する事は難しい状況にあるが、これまでの解析により、相対論的電子の降込みが磁気嵐中のサブストームに観測されることが新たに判明した。この知見を活かし、今後は孤立サブストームと磁気嵐中のサブストームの波動の伝搬特性などの、磁気圏内のパラメータを比較する研究を行い、MeV電子降込みが起きる条件を伝搬特性以外の観点も含めて総合的に考察する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件)
J. Geophys. Res. Space Physics
巻: 120 ページ: 1,13
10.1002/2014JA020690
Geophys. Res. Lett.
巻: 41 ページ: 8076, 8081
10.1002/2014GL061927
巻: 119 ページ: 9160, 9173
10.1002/2014JA020618