ユビキチン経路とは、ユビキチンを標識することで標的タンパク質をプロテアソームによる分解へ導くタンパク質分解経路である。ユビキチン経路では、E1、E2、E3という3種類のタンパク質が働くことが知られている。植物においてユビキチン経路の特異性を担うのはE3であると考えられており、E3を明らかにすることがユビキチン経路の意義およびメカニズムを解明する上で最も重要である。 ユビキチン経路はタンパク質の分解系であることから、植物ウイルスに対する抗ウイルス防御反応として機能することが予想される。そこで本研究では、タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)をモデルウイルスとして用い、植物ウイルスに対するユビキチン経路を介した防御応答の解析を行う。
本研究の遂行にあたり、ウイルスタンパク質の分解とウイルスの複製の両方を同時に評価するin vitro系の構築が必須である。本年度は、上記in vitro解析系の構築に向け、単一のin vitro翻訳系において複数のタンパク質を順次翻訳させる条件について検討を行った。タバコBY-2培養細胞由来細胞抽出液 (BYL) を用いて複数タンパク質の翻訳活性を評価したところ、二番目以降に加えたmRNAからの翻訳産物の蓄積量は、最初に加えたmRNAからの翻訳産物の蓄積量と比べて、著しく少ないことが明らかになった。そこで、最初のmRNAを翻訳させた後に新鮮なBYLを加え、二番目のmRNAを翻訳させるという手順を踏むことにより、複数のタンパク質を翻訳することが可能であった。
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