研究実績の概要 |
水田から放出される温室効果ガスメタンの量は、イネ品種により異なる。品種間差の原因を探るために、代表的なイネ品種であるコシヒカリとメタン放出量の少ないタカナリを用いて、根圏土壌や根に生息する微生物の群集構造やメタン酸化、生成に関わる遺伝子のコピー数の違いを調べた。 ・微生物群集構造:コシヒカリとタカナリの根に生息する細菌と真核微生物の群集構造を16S, 18S rRNA遺伝子のシーケンス解析により調べた。両品種とも、イネ生育ステージが進むと微生物群集が変化した。イネの生育ステージが進むことによる微生物群集の変化は、コシヒカリの方が顕著であった。コシヒカリの方が大きな変動を示した微生物種には、メタン生成菌を含む多様な分類群が含まれていた。本研究の結果は、メタン放出が少ないタカナリでは、イネのグロースステージが進んでも、メタン生成菌や共生微生物の菌数増加が、コシヒカリよりも低く抑えられていることを示唆しており、根圏微生物群集のステージ変化が水田からのメタン放出量と深く関わることが示された。 ・メタン酸化、生成に関わる遺伝子のコピー数:昨年度は、根圏土壌や根から抽出したDNAに含まれるメタン酸化、生成に関わる遺伝子のコピー数を調べた。本年度は、根圏土壌から安定的に高品質のRNAを得る方法を確立し、その方法を用いて採取した根圏土壌サンプルの分析を行った。根圏土壌のメタン酸化、生成遺伝子のコピー数は、DNA, RNAともに顕著な品種間差は観察されなかった。この結果は、根や根に非常に近傍な土壌でのメタン生成、酸化がメタン放出量に大きく影響することを示唆している。そこで、根サンプルのRNA解析法の検討を行い、安定的に高品質のRNAを抽出し、メタン酸化、生成に関わる遺伝子のコピー数を分析する方法を確立した。
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