研究課題/領域番号 |
14J09515
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
片岡 みなみ 熊本大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 岩石 / 破壊靭性 / 破壊メカニズム / 封圧 / 環境依存性 / 微視的破壊靭性 / 鉱物粒子 |
研究実績の概要 |
今後ますます多様化・大規模化すると考えられる岩盤構造物の設計や安定性評価のためには,岩石の破壊メカニズムを明らかにすることが重要な課題である。このために,破壊き裂の進展抵抗を示す強度指標である破壊靭性に関する研究が行われてきた。岩石の破壊靭性は,岩石を取り巻く環境によって変化することが知られている。とくに,岩盤構造物が建設される地下深部では高い地殻応力が存在するため,封圧が破壊靭性に及ぼす影響を考慮する必要があるが,岩石の破壊靭性の封圧依存性に関する研究は数少ない。また,岩石の破壊靭性は,岩石そのものの微視的構造特性の影響を受けることも知られており,この原因は,鉱物粒子の種類や粒子内あるいは粒子境界での強度が異なるためであると推察される。しかし,鉱物粒子そのものや粒子境界における微視的なスケールでの破壊靭性を評価できる試験方法は世界的に見ても皆無である。そこで本研究は,岩石の破壊メカニズムの解明を最終的な目標として,本年度は,岩石の破壊靱性の封圧依存性に関する実験的検討を実施するとともに,岩石の微視的破壊靭性試験法を開発し,これを用いて微視的な破壊靭性の評価を行った。 まず,堆積岩を用いた封圧下での破壊靭性試験を実施し,封圧が岩石の破壊靭性に及ぼす影響を検討した。この結果,封圧が増加するとともに岩石の破壊靭性は増加する傾向があることを確認した。つぎに,微視的なスケールでの破壊靭性の試験法の開発および微視的な破壊靭性の評価に取り組んだ。具体的には,金属材料を対象とした微視的材料試験機を基礎とし,岩石材料の微視的破壊靭性試験が実施可能な材料試験機を作製するとともに,この試験機を用いて,結晶質岩石を構成する鉱物粒子の破壊靭性を評価した。この結果,岩石の微視的破壊靭性は,従来の破壊靭性試験で評価された破壊靭性より小さな値を示すという,新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,堆積岩を用いた封圧下での破壊靭性試験を実施し,封圧が岩石の破壊靭性に及ぼす影響を検討した。さらに,この成果および研究代表者がこれまでに実施してきた,異なる環境下における岩石の破壊靭性試験で得られた結果を総合し,岩石の破壊靭性の環境依存性について考察し,博士論文として取りまとめた。この研究項目は,おおむね計画通りに進展した。 また,微視的なスケールでの破壊靭性試験法の開発および微視的な破壊靭性の評価に取り組んだ。具体的には,金属材料を対象とした微視的材料試験機を基礎とし,岩石材料の微視的破壊靭性試験が実施可能な材料試験機を作製するとともに,この試験機を用いて,結晶質岩石を構成する鉱物粒子の破壊靭性を評価した。この研究項目についても,順調に進展した。 一方,岩石の微視的構造が破壊き裂進展に及ぼす影響に関する解析的検討においては,岩石の微視的構造を考慮した解析モデルの作成に時間がかかり,研究遂行に若干の遅れが生じた。 これらを総合すると,本研究課題はおおむね研究実施計画書通りに進んだため,現在までの達成度は(2)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度で開発した微視的なスケールでの破壊靭性試験法を用い,結晶質岩石を構成する鉱物粒子および粒子境界の破壊靭性を評価する。これにより,岩石の微視的破壊靭性データの蓄積を目指すとともに,その結果について考察する。 さらに,岩石の微視的構造特性を考慮したき裂進展の数値シミュレーションを実施する。この結果および研究代表者がこれまでに実施してきた,結晶質岩石を用いた破壊靭性試験の結果を比較し,微視的構造特性が岩石の破壊靭性および破壊挙動に与える影響について考察を行う。 最終的には,これまでの研究成果を総合し,岩石の破壊メカニズムについて検討を行う。
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