研究課題/領域番号 |
14J09518
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中口 悠輝 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ゲージ/重力対応 / ブラックホール / エンタングルメント・エントロピー |
研究実績の概要 |
今年度の研究では3つの論文を発表できた。
1つ目の論文“Holographic Interpolation between a and F”では、繰り込み群で単調減少する自由度の指標として次元の偶奇に応じて別々に提案されていた共形異常の係数aと球面の自由エネルギーFを次元に関し補完する量として予想されていたFtildeに対し、ホログラフィーの重力側では確かに繰り込み群で単調減少することを証明した。 2つ目の論文“Holographic Entanglement and Causal Shadow in Time-Dependent Janus Black Hole”では、ホログラフィー対応において無限遠の境界と未来的にも過去的にも因果的に無関係な重力側の領域“causal shadow”が境界の場の理論側でどう記述できるのかを調べる第一歩として、causal shadowを持つあるブラックホールにおいてcausal shadowに侵入しうるあるホログラフィックエンタングルメントエントロピーの時間発展を計算し、causal shadowの広さを司る変形パラメータがエンタングルメントエントロピーの相転移時刻に現れるなどの結果を得た。 3つ目の論文“Entanglement Entropy of Annulus in Three Dimensions”では、場の理論におけるエンタングルメントエントロピーの一般的性質を調べるため、空間を離散化する方法およびホログラフィックな方法各々でアニュラス領域のエンタングルメントエントロピーをCFTの場合と有質量の場合で数値計算し、有質量の場合の既存の公式に対して質量に関して指数的に減衰する補正項を発見した。また、アニュラスの幅が薄い極限ではアニュラスをまたぐ相互情報量が幅に反比例し、その係数が場の理論のUVでの自由度の指標を与えることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は3つの論文を発表でき、おおむね順調に進展していると言える。
ホライゾンのある時空を量子論的に記述する有力な手法としては、ある時空上の量子重力理論をその時空の境界上の量子論として与えてしまうホログラフィー原理がある。ホログラフィー原理においては元の重力側の物理を境界側で表現する様々な辞書が分かっており、特に近年では、重力側の時空そのものをどう境界側で表現できるのかが盛んに研究されている。その際、時空に基本的な量である面積に対応すると知られるエンタングルメントエントロピーという概念が鍵となると思われている。そこで今年度は場の理論側および重力側それぞれにおいて、エンタングルメントエントロピーあるいはそれから構成される自由度の指標の性質を様々に調べ、ある程度の成果を出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、今年度に出した論文に続く内容の研究を考えている。
2つ目の論文“Holographic Entanglement and Causal Shadow in Time-Dependent Janus Black Hole”の続きとして、対応するCFT側でもエンタングルメントエントロピーを計算して今回の重力側の結果と比較し、causal shadowについてCFT側でどう理解できるのかを調べたいと考えている。 3つ目の論文“Entanglement Entropy of Annulus in Three Dimensions”では一般に相互情報量が場の理論の自由度の指標として使えそうだと示唆する結果が得られたので、この研究の続きとして、他の次元や理論でも相互情報量が自由度の指標となっているかを調べたいと考えている。
その他、場の理論におけるエンタングルメントエントロピーの摂動の一般論の構築などのアイデアもある。
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