研究課題/領域番号 |
14J09569
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 照貴 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 河川 / 流砂 / 流量 / 藻類 / 底生動物 / ダム |
研究実績の概要 |
1.初年度から継続して実施してきた室内および野外操作実験の結果、流砂ー付着藻類ー藻類食者の間にあるバランスが、流砂の欠乏によるボトムアップによっても、藻類食者の消失によるトップダウンによっても大きく崩れることが明らかとなった。 2.日本全国のダムが存在する川と存在しない川を対象に、河床材料の既存データの整理と現地での追加調査を行った結果、ダムが存在しない川に比べて、ダムの下流部では16 mm以下の小礫もしくは64 mm以下の中礫が欠乏しやすいことが明らかとなった。 3. 国内に約3,000ほどあるダムの中から、約30の大規模な治水ダム(国土交通省が管轄)を選び、流況に対する影響を検証した。ダム湖への流入量と、ダム堤体からの放流量を比較したところ、治水ダムという目的を反映して最大洪水量は大きく変化しており、流入に比べて放流の最大洪水量は少なくなっていた。また、洪水のピークをダムが低減する一方で、ダム湖に蓄えた水量を徐々に放流することから、ダムからの放流では洪水の持続時間が長くなり、流量の増加速度が低下する傾向にあることが明らかとなった。 4. 河川水辺の国勢調査(河川版およびダム版)に集積されている底生動物群集データを整理し、さらに追加調査を行うことで、底生動物のbiotic homogenization(β多様性の減少)の有無について検証した。ダムが存在する河川と、存在しない河川を対象に底生動物群集の類似度を比較したところ、国内の河川ではbiotic homogenizationが生じているわけではないことが明らかとなった。ただし、ダムの存在はダム下流部だけでなく、ダム上流部でも種数の低下をともなう群集構造の変化をもたらしており、ダムの上ー下流でみられる群集の違いを大きくしていたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から進めてきた室内および野外での操作実験は、途中、突発的な洪水による消失を経験したものの、概ね終えることができ、流砂ー付着藻類ー藻類食者の間にある関係性について、ボトムアップとトップダウンによる経路に基づいて解明することができた。 また、データベースを用いた研究についても、すでにデータの集約を終えており、局所群集における多様性の低下が流砂の欠乏によって生じる一方で、河川間にある局所群集同士の違いについては失われていないことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から進めてきた室内および野外での操作実験の結果については、流砂ー付着藻類ー藻類食者の間にあるボトムアップとトップダウンの影響に関して、論文化を進める予定である。 また、データベースを用いた研究についても、幾つかの追加データが必要であるものの、今年度中にさらなる解析を進め、流量や流砂量の人為的な改変をどの程度に抑えるべきなのかについて明らかにし、得られた知見を論文化する予定である。
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