1. 過去2年間に実施した室内および野外操作実験で得られた結果をまとめ、流砂―付着藻類―藻類食者の間にあるバランスが、流砂の欠乏によるボトムアップによっても、藻類食者の消失によるトップダウンによっても大きく崩れることを明らかにした。特に、流砂の欠乏は影響が大きく、流砂による摩耗効果がなくなることは、付着藻類の過剰ともいえる生長をもたらし、藻類食者が藻類を餌として利用できない状況をつくりだすことが明らかとなった。この知見から、付着藻類が繁茂する一方で、藻類食者が存在しないといった野外で見られる状況を説明できるものと考えられる。 2. 流量および河床材料、藻類食者の現況を広域的に評価できるデータベースを作成した。付着藻類については、既存の資料が不足していることから、局所的なデータベースとなっているが、これらを活用することで流砂―付着藻類―藻類食者間にある関係性について解析を進めた。その結果、流量については渇水の頻度が底生動物群集に負の影響を及ぼし、流砂量の減少に伴う河床の粗粒化が特定の分類群の消失を招くなど強く影響していることが明らかとなった。 3. 流砂の減少や流況の改変など、河川における人為的な影響が環境の単純化・均質化をもたらし、その変化が生物群集の単純化・均質化をもたらすのか否かについて、前述したデータベースを用いて検証した。その結果、ダムなどによって流量の均質化は生じていない一方、流砂の減少によって河床を構成する材料から粒径の小さな砂礫が欠乏し、やや単純化する傾向にあった。そして、この河床の単純化が生物群集の単純化を引き起こしている可能性も示唆されたが、国内の地域的な違いも大きいことが明らかとなった。つまり、注目する空間スケールに依存して均質化の度合いが異なっている可能性が示唆された。
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