研究課題/領域番号 |
14J09576
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩根 由彦 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 生物有機化学 / リボソーム / 試験管内翻訳反応 / 特殊アミノ酸 / ペプチド |
研究実績の概要 |
研究の目的 本研究では、特殊アミノ酸(Xaa)を付加した各アミノアシルtRNA(Xaa-tRNA)と翻訳伸長因子EF-Tu間の結合力を調整することで、Xaa導入に特化した試験管内ペプチド合成系を開発し、10種以上のXaaを含むペプチドの翻訳合成を実現する。さらにその翻訳系を応用してペプチド薬剤スクリーニングを行い、多数の人工修飾により優れた生理活性を獲得した新規特殊ペプチド薬剤を開発することで、本戦略の意義を実証する。
DC1第二年度の研究経過 初めに、(1)Xaa-tRNAとEF-Tu間の結合力を正確に定量する手法を確立した。(2)その測定法を用いて、Xaa-tRNAのEF-Tu結合力が天然アミノアシルtRNAよりも一般に低いことを実証した。(3)前年度に開発した結合力調整法により、Xaa-tRNAのEF-Tu結合力を天然アミノアシルtRNAに相当する値にまで補強できることを確認した。(4)結合力調整によりXaa含有ペプチドを翻訳合成する反応の効率・正確性が改善されることを確認した。(5)6種のXaa-tRNAのEF-Tu結合力を一定の値に揃えることで、人工修飾を多く含む特殊ペプチドを効率良く翻訳合成することを試みた。現在最適化実験の途中であるが、来年度に10種のXaaを含む特殊ペプチドの翻訳合成を達成することを目指す。また関連する新技術として「コドンボックス人工分割」法を確立し、Nature Chemistryに発表した(Iwane, Y. et al. Nat. Chem. 8, 317-325 (2016))。この研究はDC1採択テーマ「リボソーム翻訳におけるアミノ酸基質許容性の拡大」と密接に関係し、知見やノウハウを共有するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、本研究課題で挙げた仮説すなわち「Xaaの導入効率が低い原因は、Xaa-tRNAがEF-Tuと十分に結合できないことにあり、この問題を解決することで、より多様なXaaを効率良く正確に導入できるようになる」という仮説が立証された。本研究で確立されたEF-Tu結合力調整法は、多様なXaaの導入効率を改善する実用的な新技術であり、既に研究室内外で多数の共同研究に貢献している。また現在最適化実験中であるものの、6種以上のXaaを含む特殊ペプチドの高効率翻訳合成が実現することを示唆するデータも得られている。上記研究成果から、多数の人工修飾を含む特殊ペプチドのスクリーニング系が採用期間中に構築されると見込まれるため、「概ね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策 (1)EF-Tu結合力調整法を用いて10種のXaa-tRNAがバランスよくEF-Tuに結合することを可能とし、その条件において高度修飾特殊ペプチドの翻訳合成を検討する。(2)本技術と特殊ペプチドスクリーニング技術と組み合わせ、50%以上が特殊アミノ酸により構成される新規特殊ペプチド薬剤を開発する。(3)獲得された特殊ペプチドが多数の人工修飾により優れた生理活性を示すことを実証する。(4)実用的な特殊ペプチドを効率良く開発できる革新的スクリーニング手法として学会誌に報告し、新規創薬技術として社会に貢献することを目指す。
|