研究課題/領域番号 |
14J09617
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
李 旭 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 介護労働 / ケアワーカー / 日韓比較 / 介護保険 |
研究実績の概要 |
本研究は、日韓ともに未曽有の高齢化を背景に介護労働市場がどのように形成・変容してきたのかを解明することを通じて、現在、どのようなケア実践が在宅介護者によって担われ、また家族介護者によって担われているのかを日韓比較から明示していくものである。これまでの日韓高齢者政策の歴史において「施設介護労働市場/在宅介護労働市場/家族介護領域」という三つの領域では、誰がどのように生活し、介護してきたかを踏まえ、特に介護保険制度創設以降において家族介護領域が日韓でそれぞれどのように変容してきているのか、在宅介護労働市場ではどうなのか、更には施設介護労働市場ではいかなる変容であるのかを史資料を通じて解読し、それによって日韓における高齢者介護政策の国際比較分析を行なうことを目的とする。
上記の目的に即して、2014年度は韓国の全州市を中心にフィールドワークを実施し、在宅介護と家族介護に関する史資料の収集や在宅介護労働者と家族介護者に対して聞き取り調査を行った。「家庭奉仕員」制度から展開された日本の「ホームヘルパー」と韓国の「療養保護士」をはじめとするフォーマルな在宅介護労働者に対して史資料と学術論文などの文献調査を中心に、日韓両国の介護保険以後のホームヘルパーの歴史をたどりながら、その在宅介護労働がいかに変容したのかを明らかにしたのである。
韓国で行われたフィールドワークでは関連学科の教員や研究員,そして政策担当公務員の指導とコメントを受け文献考察をしつつ第一線の研究者との交流を深めた。インテンシブなフィールドワークで介護労働実態を把握することからその変容を実証的に検討し、こうした調査から現代韓国型生活保障システムから韓国の介護労働市場が形成されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、未曽有の高齢化を遂げつつある日本と韓国の国際比較分析を通じて、両国における介護労働市場がいかに形成されてきたのか、そうした介護労働市場はそれぞれの介護保険制度創設を契機にいかに変容してきたのか、両国の介護労働市場のあり方によって現実の高齢者介護をめぐる現実の形作られ方がいかに異なってきているのかを、緻密かつ詳細な調査を通じて解明しようとする研究である。 上記の目的に即して、2014年度は7月と11月にフィールドワークを実施すると同時に、韓国での介護労働市場や福祉国家を研究する第一線の研究者との交流を深めた。こうした調査から現代韓国型生活保障システムから韓国の介護労働市場が形成されていることを明らかにした。 研究の達成度は計画通り順調に進んでいるが、その成果発表については、今年度は時間的かつ手続き的制約から、2014年11月に開催された障害学国際セミナー(立命館大学生存学研究センター共催企画)でのポスター発表「日本における福祉用具貸与制の現状と課題」に限られたが、2015年度は蓄積したデータを論文として発表することが課題であり、学会での報告を積極的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「韓国型高齢者福祉の誕生」と「韓国型介護労働の誕生」の位置付けを明らかにするため、韓国国会図書館や大学図書館にある史資料を調べ解読する必要がある。 そのため、今回行われなかった史資料と統計資料の調査が必要し、時間的かつ手続き的制約からできなかった研究成果の発表を積極的に推進する必要があると思われる。 現在は、フィールドワークでのデータを蓄積しその成果としてまとめている過程にある。また、日韓の国際的研究者ネットワークを形成しつつ、今後の論文として研究成果を発展させていく予定である。
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