研究課題/領域番号 |
14J09699
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
牟田園 正敏 熊本大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | ヘテロクロマチン / スプライシング / non-coding RNA |
研究実績の概要 |
染色体の正確な分離のためには、セントロメア領域がヘテロクロマチン化されることが重要である。分裂酵母では、RNAi機構を介したセントロメアヘテロクロマチン形成が知られている。我々は現在までの解析から、スプライシング変異株prp14がスプライシングの異常に加えて、セントロメア領域のヘテロクロマチン形成に異常を示すことを明らかにした。さらに、Prp14pはRNAi機構の因子であるCid12pと結合すること、セントロメアdg領域から転写されるnon-coding RNAにイントロンが含まれることを明らかにしている。 セントロメアdg領域のイントロンの機能を調べるために、ユークロマチン領域のgcd10遺伝子のイントロンに置換したPlasmidを作成した。ヘテロクロマチン化の指標であるH3K9me2レベルをChIP解析により調べると、gcd10イントロンに置換した場合H3K9me2が顕著に減少していた。さらに、gcd10イントロンで置換する領域を縮めていき、最終的にH3K9me2修飾を促進するシス配列としてdgイントロンの5’側46塩基を同定した。シス配列に結合し得るタンパク質をデータベースで網羅的に調べ、RNA IP解析により検証した結果、機能未知の新規タンパク質を1種同定した。 セントロメア領域にはdgイントロンの他に、他のグループから複数イントロンが存在することが報告されている。dgイントロンの特徴として、イントロンが取り除かれるスプライシング反応の効率が非常に悪い点がある。これにより、スプライシング因子、RNAi因子が集積しヘテロクロマチン形成を促進していると考えている。そこで、セントロメア領域にある他のイントロンに関してもスプライシング効率を調べた結果、dgイントロンと同様に非常に悪いことが分かった。つまり、セントロメアイントロンに共通した働きがあることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画の1つ目に掲げている「dgイントロン上に形成される複合体の同定」を目的とした解析において、イントロン5’側に機能未知の新規タンパク質が結合することを明らかにした。また、dgイントロンの重要性を示すとともに、イントロン5’側の配列を、H3K9me2修飾を促進するシス配列として同定した。しかし、全体的な複合体の同定にまでは至っていないので、今後の解析が急務である。 また、新たな解析として、dgイントロン以外のセントロメア領域に存在するイントロンについても解析を進めた。他のグループからセントロメア領域には、dgイントロン以外のイントロンが存在することが報告されている。他のセントロメアイントロンにおいて解析を行った結果、dgイントロンと同様に非常にスプライシング効率が悪いという特徴を明らかにした。このことは、今後の解析を進める上で大きな前進である。以上の結果から、(2)の区分と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
dgイントロン上でどのような因子が集積しヘテロクロマチン経路へ向かうのか全容が明らかになっていない。そこで、dg ncRNA上に結合している因子を網羅的に調べるために、RNA複合体をPull-downしMS解析により同定する。これは、当初の年次計画の1, 2年目に該当するが、昨年度はdgイントロンの詳細な解析を優先して実験を行ったため達成できていない。したがって、3年目の解析としてRNA複合体の同定を行う。 さらに、昨年度新たに着手したdgイントロン以外のセントロメア領域のイントロンの解析も引き続き行う。dgイントロンの解析で培った手法を用い、複数のセントロメアイントロンにおいて解析を進める。
|