研究課題
平成26年度においてはHeLa TRex細胞株を用いたテトラサイクリン誘導性SRSF3安定過剰発現細胞株を構築し、SRSF3を介した細胞増殖メカニズムの機能解析を進めた。1.SRSF3過剰発現時細胞の増殖能を検討したところ、過剰発現による有意な増殖能の亢進はみられず、細胞周期チェックポイント関連遺伝子の発現量にも有意な変化は無かった。また、2.腫瘍内微小環境モデルとしての低酸素条件及び低グルコース条件下での耐性能を検討したところ、低酸素条件下96時間後でのSRSF3過剰発現細胞の生存率は変化せず、低グルコース条件下でも有意な差は無かった。さらに、3.Doxorubicin、Etoposide、5-FUを用いて薬剤耐性能について検討したところ、SRSF3過剰発現細胞株では有意な耐性能はみられなかった。以上の結果からHeLa細胞におけるSRSF3過剰発現は細胞増殖能、低酸素耐性能、低グルコース耐性能、抗がん剤耐性能に影響せず、SRSF3単独の過剰発現はがん化をもたらさないことが示唆された。これらの研究結果はH26年度日本分子生物学会において報告した。さらに、SRSF3と同様にノックダウンにより細胞死を誘導するSRSF6についても研究を進め、4.ヒト癌サンプルにおける遺伝子発現解析の結果、大腸癌において過剰発現していることを明らかにした。5.これまでの研究で、SRSF6は酸化ストレスにより誘導され、大腸がん細胞株においてSRSF6をノックダウンすると増殖能が顕著に低下し、さらに、6.ノックダウンした細胞ではDNAダメージが誘発され細胞死が誘導されることを突き止めた。ゲノム安定性及び細胞周期の制御に極めて重要な役割を果たすことが示唆された。これらの新たな知見を基に、SRSF6の詳細な機能についてSRSF3とのインタラクションも踏まえ解明すべく取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度においては、計画していたSRSF3を介した細胞増殖メカニズムの機能解析を進め、HeLa TRex細胞株を用いたテトラサイクリン誘導性SRSF3安定過剰発現細胞株を構築し、1.SRSF3の過剰発現が細胞周期及び細胞増殖能に影響せず、2.腫瘍内微小環境モデルでの生存率を変化させず、3.抗がん剤に対して有意な耐性能をもたらさないことを明らかにし、SRSF3単独の過剰発現はがん化を促進しないことを見出した。さらに、SRSF3と同様にノックダウンにより細胞死を誘導するSRSF6についても研究を進めた。その結果、4.大腸癌でSRSF6が過剰発現していることを明らかにした。また大腸がん細胞株において、5.SRSF6のノックダウンが増殖能を顕著に低下させ、さらに6.DNAダメージを誘発し、細胞死が誘導されることを突き止めた。これらの新たな知見を基に、SRSF6のゲノム安定性及び細胞周期の制御ついてSRSF3とのインタラクションも踏まえ、解明に取り組みインパクトの高い研究へと発展させている。これらの研究結果の一部は海外及び国内学会において発表し、論文作成に取り組んでいる。
今後はノックダウンにより細胞死が誘導されるSRSF6について詳細に機能解析を行う。特にSRSF6によるゲノム安定性及び細胞周期の制御のメカニズムを解明する。ゲノム安定性の制御についてはクロマチン構造への関連を考え、Histoneとの結合を中心に解析を進める。また、細胞周期制御についてはFACSを用いてSRSF6ノックダウン時の細胞死のタイミングを明らかにし、関連する細胞周期調節因子の発現解析を進める。同時に抗SRSF6抗体を用いた免疫沈降を行いSRSF6に直接結合するターゲット因子の同定を目指す。
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