平成26年度に、Serine/arginine-rich splicing factorファミリーの一つであるSRSF6をノックダウンするとヒト大腸癌細胞の増殖が停止すること、さらに、SRSF6ノックダウン細胞ではDNA損傷が誘導されることを明らかにした。 平成27年度は、これらの新たな知見を基に、SRSF6のゲノム安定性及び細胞周期の制御ついて機能解析を進めた。その結果、FACSを用いた細胞周期の詳細な解析により1.SRSF6のノックダウン細胞ではDNA合成期であるS期の進行が遅延しており、その結果、増殖能の顕著な低下がもたらされることを明らかにした。また、SRSF6のゲノム安定性の制御メカニズムについて、クロマチンとの相互作用に注目し、検討を行ったところ、2.SRSF6のクロマチン分画への局在がS期に顕著に増加していること、さらに、抗SRSF6抗体を用いた蛍光免疫染色法によるSRSF6の局在の検討の結果、3.S期が進行途中のヒト大腸癌細胞において、DNA合成領域にSRSF6が局在していることを見出した。また、抗SRSF6抗体を用いた免疫沈降法から、4.この時にSRSF6がヒストンH3およびDNA合成時の複製フォークの進行に重要なDNAヘリカーゼであるMinichromosome Maintenance Complex(MCM複合体)に結合していることを同定した。以上の結果から、SRSF6がS期進行時にヒストンH3およびMCM複合体との結合を介した新たな分子機構によりDNA合成を制御する可能性を初めて明らかにした。
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