研究実績の概要 |
今年度は昨年度構築した注意誘導可能な意図提示型遠隔指示系を実世界内の道具利用課題に対して適用することを目標として研究を実施した. 特に実世界内においてタスク実現を行うためには周囲の環境を認識し自己位置をもとに行動を計画するためのシステムが必要であったことから, 注意誘導・意図提示システムのための自己位置同定・環境認識システムを構築した. まず道具利用課題の実例として車運転タスクを取り上げ, 前年度に構成した車運転タスクのための注意誘導可能な意図提示型遠隔指示系を引き続き車運転タスクに適用し有効性を検証した. 特に今年度は車の幾何モデルに基づく予測軌道提示とインタラクティブな遠隔指示のためのユーザインタフェースを開発し, 実世界実験環境において有用性を検証した. 車運転操作行動や道具操作行動においてロボットが実世界において安定してタスクを実行するための環境認識・自己位置同定システムの重要性が明らかになったため, ヒューマノイドロボットのための仮想レーザとビジュアルオドメトリを統合した自己位置同定システムを開発した. 提案する自己位置同定法により最大で2[m]の積算自己位置同定誤差が0.02[m]まで低減した. 次に獲得した周囲環境点群と本研究室で開発している経路プランナを統合し, 遠隔指示された目的地に対して障害物を自律的に回避しながら経路を計画しユーザに提する意図提示型経路プランナを開発した.このプランナはヒューマノイドロボットの二足歩行のほか, 車の自動運転行動にも拡張し有用性を確認した. 最後に開発した周辺環境認識・自己位置同定システム及び意図提示型経路プランナを当研究室で開発している道具認識操作システムに統合し, 周辺環境に応じた道具操作行動に拡張した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度構築した注意誘導可能な意図提示型遠隔指示系を実世界内の道具利用課題に対して適用することを目標として研究を実施した. 昨年度に引き続き車運転操作タスクを実世界環境で実現したほか, 安定したタスク実現のための自己位置同定・環境認識システムを遠隔操作システムに統合し周辺環境認識結果に基づく行動意図提示型プランナを開発した. またこのプランナを道具操作行動システムに統合することでオペレータによる注意誘導に基づく意図提示型遠隔指示道具操作行動を実現した. 研究の進捗としては, 昨年度から継続して研究してきた意図提示型の遠隔操作システムに対し自己位置同定・環境認識システムを構築,統合し,車運転操作タスクに限らず,バルブ回し等といった道具操作行動への展開を進めてきており,概ね順調に研究が進展していると考えている.特に自己位置同定システムでは運動モデルの詳細な推定を行うことで,同定誤差を0.02[m]に低減することができている.これは本システムを利用しない場合と比較して100倍の高精度である. この成果は国際会議投稿論文として取りまとめており, 現在査読中である.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の車運転操作行動における注意誘導可能な意図提示型遠隔指示系の有効性検証と注意誘導・意図提示システムのための自己位置同定・環境認識システム構築を踏まえたうえで, 今年度はさらにオペレータの注意意図の獲得とロボットの行動意図の提示に関する研究を深化させる. 具体的には, ヒューマノイドロボットの多様な移動形態遷移可能性を利用するために四足歩行等の複数移動形態への提案手法の拡張を行うとともに操作可能な道具の一般性を向上させ,四足歩行,自転車走行,ドア開け,ドリル操作などの屋外環境下における車以外の多様な道具操作行動の検証を行う予定である. 特にロボットの自律系の状態に応じて必要な注意獲得と意図提示の段階を適応的に変化させるような自律と誘導の融合型のシステムの構築を目指すとともに,操作・動作モデルをはじめとしたシステム内部状態を獲得可能な学習型システムへとさらに研究を進展させて, 博士論文としてまとめる予定である.
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