本研究は、局在型および伝搬型表面プラズモン共鳴の結合による小型高感度かつ疾病バイオマーカに選択性を有する疾病スクリーニングセンサの開発を目的とする。そのために局在型表面プラズモン共鳴を励起する金微小球(径100nm)を、伝搬型表面プラズモン共鳴を励起する逆ピラミッド型凹構造(幅124nm)の中にトラップさせた周期的立体構造を考案した。 微小球と凹構造の組合せによるプラズモン共鳴には二つのモードが存在することが3次元時間差分領域法による光学シミュレーションで分かった上で、それぞれの共鳴メカニズムを2次元有限要素法によって明らかにした。計算結果から、微小球と凹構造の間に形成される狭小ギャップに強い電場増強が確認され、その増強値は長波長側の共鳴波長で最大になることが分かった。更に、光エネルギーフローと電場分布の解析により、強い電場増強は微小球と凹構造の相互作用によるものであることを明らかにした。 このような局在型と伝搬型表面プラズモン共鳴の結合に関する研究はまだ少なく、これらの結果はプラズモニクス分野の研究領域拡大へつながると期待できる。工学的には構造の周期性と簡単な自己組織化技術によるロバストな形状コントロール性を持ち、作製と評価の再現性確保が容易である。 実際に直径100 nmの金微粒子を逆ピラミッド型凹構造の中にトラップした周期350 nmの立体構造配列を試作し、暗視野顕微鏡による散乱スペクトルからシミュレーション結果の妥当性を検証した。構造周りにベンゼンチオールを極微量ドープし、構造の共鳴波長に近い励起波長の633nmレーザーによるラマン散乱を計測し、表面増強ラマン散乱によるピーク強度の定量的に評価し、単分子計測による構造の強い表面増強ラマン散乱性能を検証した。
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