研究課題/領域番号 |
14J09915
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西口 大貴 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | アクティブマター / 自己駆動粒子 / 集団運動 / 非平衡統計力学 / ゆらぎ / コロイド / ヤヌス粒子 / バクテリア |
研究実績の概要 |
非平衡条件下で駆動する自己駆動粒子の運動、およびアクティブマターの集団運動の解明を目指して、非生物と生物の両方を取り上げて実験を進めた。 非生物系の例として、交流電場下で自己駆動する非対称なコロイド粒子(ヤヌス粒子)を用いた。粒子表面や電極表面の処理を改良することにより、ヤヌス粒子を高密度で駆動させることに成功した。この状況において、ヤヌス粒子の速度相関・局所秩序変数などを測定した。これにより、衝突を繰り返しながら進んでいる乱流のような状況でも、同じ方向に進む粒子が連なった構造が存在することを明らかにした。 次に、粒子のアスペクト比が粒子集団の運動に与える影響に着目した。ヤヌス粒子は球形のため、衝突時に粒子同士の向きを揃える相互作用が弱い。そこで、アスペクト比の高い極限の粒子の集団運動を実現し、比較をおこなった。具体的には、大腸菌を抗生物質下で培養して細長く成長させることで得られる、フィラメント状の大腸菌を使用した。これにより、高アスペクト比での実験をおこなうと同時に、単純な生物系での集団運動の実現を目指した。 フィラメント状の大腸菌を擬2次元系に閉じ込めることで、大腸菌同士が頻繁に衝突しあって向きが揃っていく状況を実現できた。この条件下で粒子数密度が高いときに現れる集団運動のマクロな相は、通常サイズ時に大腸菌がtumblingを示すか否かによって変わることを突き止めた。Tumblingを示す野生株では、局所的に向きは揃うものの、向きの異なるドメインが多く共存し、大域的な秩序は現れなかった。一方、tumblingを示さない変異株では、対向する大腸菌が共存する大域的なネマチック相が得られた。また、この状況において、先行研究の理論およびシミュレーションで予言されている粒子数密度の異常な揺らぎ(Giant Number Fluctuation)を確認し、その冪指数がシミュレーションの予測と無矛盾であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤヌス粒子の実験系を、電極や粒子の表面処理などの工夫により、高効率でデータ収集が可能な物に改良できた。これにより、一定の結果が得られるとともに、次年度以降の実験に必要な条件を整えることが出来た。得られた結果は、投稿論文にまとめている途中である。 生物系を使った実験は、当初は3年目に計画していたが、前倒しして実験を開始した。目標としていた集団運動を実現する実験系を作り上げることに成功しただけでなく、tumblingの有無による集団挙動の違いなど、新たな知見も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに確立したヤヌス粒子および大腸菌の実験系で、さらにデータを取得する。得られた集団運動の性質を詳細に調べあげることで、無秩序相から秩序相への転移の様子や集団内での個々の粒子の振る舞いを、理論研究と比較しながら明らかにしていく。
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