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2015 年度 実績報告書

19世紀末から20世紀初頭の英米における形而上学研究-ホワイトヘッドを中心に

研究課題

研究課題/領域番号 14J09918
研究機関東京大学

研究代表者

吉田 幸司  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードホワイトヘッド / ジェイムズ / ブラッドリー / 有機体の哲学 / 分析哲学 / 現代英米哲学 / 形而上学
研究実績の概要

本年度は、F.H.ブラドリー、W.ジェイムズ、A.N.ホワイトヘッドの形而上学研究を前年度から継続しつつ、さらに、現代英米哲学の主流とされてきた思潮(G.E.ムーアやB.ラッセルに始まり、今日の分析哲学に通ずる思潮)との比較研究を遂行した。その結果、以下の成果が得られた。

1.分析哲学あるいはそれへ向かう思潮が、明晰さや論証、経験科学との連携を重視し、現代の英語圏で主潮をなしてきた一方で、ホワイトヘッドの哲学は、その手法が明確ではなく、独断的にさえ理解されてきた。これに対して本研究は、ホワイトヘッド哲学がもつ非分析哲学としての特徴を浮き彫りにし、その哲学の手法を明らかにした。具体的には、(1)ホワイトヘッドは、諸事物の有機的関係を強調し、言語や哲学もそうした有機的関係を捉えることで実在の把握に近づくと考えていたこと、(2)そのために、概念・言語を分析していくのではなく、語や語句を拡張し、時に隠喩に訴えながら、「まだ語られていない深みへの直接的洞察」を表現しようとしたこと、(3)この点で哲学は神秘的で詩に似ており、ホワイトヘッド哲学は、独自の術語を案出することで、既存の哲学用語や日常言語にまとわりつく暗黙の前提や考え方を乗り越え、より具体的な実在へ接近しようとしたことを明らかにした。

2.前年度との接続、および次年度の先取りとして、上記の研究を、形而上学の実践という観点からも推し進めた。従来、ホワイトヘッドらの形而上学は空虚な思弁と思われてきた。しかし、ブラドリーは、絶対者の知的探究が神的なものの経験や不安の解消に結びつくと考えていた。ジェイムズは、私的で人格的な経験に真の実在を見出していた。ホワイトヘッドは、具体的で個別的な現実の生の表現として形而上学を展開していた。これらの研究により、ホワイトヘッドらの哲学を、最も具体的な我々の実存の問題において展開する基盤が構築された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

我々の具体的で個別的な経験と科学知を統合的に論じるホワイトヘッド哲学の研究は、予定通りに進んでいる。一方、分析哲学に向かう潮流との比較研究は、より詳細に研究する必要がある。これは、研究を進める中で、ホワイトヘッド哲学との比較研究においては、ムーアとラッセルに限定せず、論理実証主義を経由して分析哲学に向かう潮流全体を視野に入れる必要があることが判明したことによる。当初は、「センスデータ」という概念と比較して、ホワイトヘッドらの「感受」という概念を研究することにより、二つの潮流の違いが明らかになるとともに、事実と価値、科学と宗教といった対立を統合的に論じることができると予想していた。しかし、文献を読み進めるなかで、両思潮は哲学の手法について、根本的に異なっていることが明らかになってきた。そこで、分析哲学との比較において、ホワイトヘッドの「有機体の哲学」がもつ非分析哲学としての特徴や手法を明らかにしたが、次年度には、分析哲学との比較研究をさらに深めるとともに、ホワイトヘッドやブラドリー、ジェイムズらの研究とあわせて包括的にまとめたい。なお、本年度は、前年度から制作していたウェブサイトを公開し、本研究の成果を含む現代英米哲学の情報の発信を実現した。

今後の研究の推進方策

ブラドリー、ジェイムズ、ホワイトヘッドらの形而上学研究や、現代英米哲学の主流とされてきた思潮、特に分析哲学との比較研究をさらに深めつつ、本研究全体を体系的にまとめる。既に研究してきたS.アレグザンダーの形而上学なども包括することで、19世紀末から20世紀初頭の英米における形而上学的思潮の全体像を描き、その中でホワイトヘッド哲学の位置づけや意義を明らかにする。とりわけ、科学的知見と、価値経験や宗教的経験のような個別的経験とを統合的に論じる形而上学として、ホワイトヘッドの「有機体の哲学」を提唱する。そうすることによって、科学的世界観と現実の生のジレンマという今日の問題を克服する実践的展開に向けて本研究を完成させる。また、ウェブサイトの情報を充実させ、異分野の研究者や一般の人にも広く情報を発信する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 非分析哲学としてのホワイトヘッド「有機体の哲学」2016

    • 著者名/発表者名
      吉田幸司
    • 雑誌名

      論集

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ブラッドリー・ジェイムズ・ホワイトヘッドの感受論研究―形而上学の実践に向けて―2016

    • 著者名/発表者名
      吉田幸司
    • 雑誌名

      プロセス思想

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] Metaphysical Practice as Existential Transformation: Bradley, Alexander, Whitehead2016

    • 著者名/発表者名
      Koji Yoshida
    • 学会等名
      The UH Philosophy Department Lecture Series
    • 発表場所
      The University of Hawaii, Manoa (USA)
    • 年月日
      2016-03-11
    • 招待講演
  • [学会発表] ムーア・ラッセル以降の英米哲学とホワイトヘッド2015

    • 著者名/発表者名
      吉田幸司
    • 学会等名
      日本ホワイトヘッド・プロセス学会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2015-09-20
  • [備考] ホワイトヘッドとその周辺の哲学に関するウェブサイト

    • URL

      http://www.tetsugakusha.net/whitehead/

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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