研究課題
本研究では描画によるコミュケーション実験を行い,相手の知らない対象を伝えるコミュニケーションの成立メカニズムを調べた.具体的には,実験記号論のアプローチに基づき,送り手と受け手の二人がやりとりを繰り返す中で,受け手にとって新規な対象の伝達が実現される推論過程,それにともなう記号システムの質的変化について明らかにした.描画実験データの分析から,受け手の知らない対象の性質を伝えるために,その性質を典型的に持つ別の対象を描く代替表現,その性質と関連する動作や身体部位を描く動作表現という2種類の比喩的表現を送り手が用いることが分かった.特に新規な対象を伝える場合,これら2種類の比喩を組み合わせた表現が多く用いられることを明らかにした.ただし,やりとりの成功・失敗ペアともに課題の後半で組み合わせ表現が増加しており,直接受け手の理解に結びつくわけではないことが示唆された.失敗ペアは課題前半で動作表現を多用する傾向があり,これが受け手の誤解を招く可能性が考えられる.また,課題中の送り手と受け手のアンケートの記述を分析し,受け手は送り手が伝える対象に関する仮説を形成し,送り手は受け手の対象理解に関する仮説を形成するという相互仮説形成の過程が,受け手の知らない対象を伝えるコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすことを示した.また,受け手の理解が進む中で,類像的から比喩的への記号システムの質的変化が生じることを明らかにした.さらに,手話という類像性が高い言語を日常的に使用するろう者が相手の知らない対象を伝える際の,聴者との表現方略の違いを調べた.聴者5ペア10人を対象とした描画コミュニケーション実験を行い,ろう者5ペア10名を対象とした実験の結果と比較分析した.ろう者では聴者よりも動作表現を多用する傾向があること,身近な対象を伝える際に代替表現の使用が少ないことを明らかにした.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of EvoLang XI, Language Adapts to Interaction Workshop
巻: 11 ページ: 1-7