研究課題
本研究の目的は、核子にストレンジクォーク、反ストレンジクォークを付与したクォーク成分で構成されるエキゾチックバリオンの存否を明らかにすることである。ペンタクォークは GeV 領域における量子色力学が抱える大きな謎の一つであり、最初の報告以降 10 年以上もの間多くの検証実験が行われてきたにも関わらず未だその存否は確定されていない。近年中性子標的を用いた η 中間子光生成反応の全断面積中に非常に幅の細いピークが確認されており、隠れたストレンジネス成分をもつペンタクォークの候補であると考えられている。しかしながら陽子標的を用いた η 光生成反応では、ηp と結合すると考えられているペンタクォーク (荷電 N5) が予言されているにも関わらず、中性子の場合に見られたような特徴的な構造は確認されていない。この事実は U スピン保存則を用いて説明ができている。そこで U スピンを満たすような反応として中性 π と荷電 N5 との同時生成反応に着目し、研究を行っている。本研究は SPring-8/LEPS2 において、液体水素標的にレーザー電子光を照射し、終状態に中性 π、η 並びに陽子が存在する反応を同定することで行う。両中間子は生成後即座に崩壊するが、共に二つの光子に崩壊するモードを対象とする。よって終状態に四つの光子と反跳陽子が存在するチャンネルを同定する必要がある。BGOegg 及び周辺検出器の建設、データ収集系の構築を終えた。BGOegg を構成する 1320 本の BGO クリスタルに接続した光電子増倍管に対する適切な印過電圧の調査を終え、全てのチャンネルで信号読み出しに成功、安定したデータ収集を行うことが出来ている。また BGO クリスタルのエネルギー、タイミング構成を行い、二つの光子の不変質量分布中にはっきりとした中性 π、η 中間子のピークが観測できた。
2: おおむね順調に進展している
SPring-8/LEPS2 における BGOegg 実験は 2013 年度より本格的なデータ取得を開始しており、これまで C, CH2, H2, 空標的に対する実験を行った。C, CH2 標的を用いた実験データに対するエネルギー、タイミング較正が進んでおり、二光子の不変質量分布中に中性 π 並びに η 中間子のピークが良く確認されている。それぞれの質量幅およそ 7 MeV, 14 MeV という数値から、BGOegg カロリメータが世界最高性能をもつことが改めて確認できた。BGOegg の前面には荷電粒子識別用プラスチックシンチレータホドスコープを設置し、入射粒子の電荷を測定することができている。また円筒型ドリフトチェンバーをインストールし、荷電粒子の飛跡を制度良く測定する準備ができている。本研究では標的核子のフェルミ運動を無視できる液体水素を用いることが望ましい。2014 年 11 月に予定通り液体標的システムをインストールし、データ収集を開始した。
今年度 11 月から液体水素標的によるデータ収集を開始しており、今後も液体水素標的によるデータ収集を続行する。データ収集と並行して、取得したデータのエネルギー、タイミング較正を進める。また BGO クリスタルの発光量は温度依存性を持つことが知られているが、各 BGO クリスタルに対するエネルギー較正係数の変動が、室温の変化と同期していることがわかった。このような影響に対する補正を行い、更に分解能を向上させる。BGOegg と標的間に設置した荷電粒子識別用プラスチックシンチレータホドスコープのエネルギー、タイミング分解能は光電子増倍管からの距離、投与エネルギー(波高)等に依存するはずである。反跳陽子の選別にあたっては、荷電 π と効率良く識別するためにホドスコープの分解能は非常に重要であるため、これらの影響を考慮した補正等を行う。
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ELPH Annual Report, Tohoku University (2011-2013)
巻: 2-4 ページ: 175-182
巻: 2-4 ページ: 183-193
巻: 2-4 ページ: 161-174
巻: 2-4 ページ: 194-200
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巻: 2-4 ページ: 151-160
http://www.lns.tohoku.ac.jp/fy2011/oldnews.php