研究課題/領域番号 |
14J09992
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増田 造 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 機能性ソフト界面 / 原子移動ラジカル重合 / ポリマーブラシ / 散逸構造 / 化学振動反応 |
研究実績の概要 |
本研究は化学振動反応とカップリングして自律的に高分子修飾表面の特性が変化する新しい機能性ソフト界面(自励振動ポリマーブラシ表面)を創製するものである。採用二年目である本年度は、これまでに確立した自励振動ポリマーブラシ表面の設計を基盤として、時空間機能の制御、具体的にはポリマーブラシ表面を伝播する化学反応波の方向制御を中心に検討を行った。 化学反応波の方向制御を実現する設計として傾斜構造を有するポリマーブラシ表面が有効であると予測し、犠牲アノードATRPを利用して目的の高分子修飾表面を調製した。表面の構造解析はXPSによる表面元素分析と、蛍光顕微鏡による振動反応の触媒Ru(bpy)3の分布を観察することで行った。振動反応を観察したところ、誘導期間の後、Ru(bpy)3の固定量が少ない領域から多い領域に向けて安定な化学反応波がした。すなわち傾斜構造を有する自励振動ポリマーブラシ表面を調製することで、Ru(bpy)3の固定量が少ない領域から多い領域に向けた化学反応波が生起することが明らかになった。上記の研究結果は査読付き研究論文への投稿準備中であり、2016年5月の高分子学会年次大会において発表を予定している。また、自励振動ポリマーブラシ表面における化学反応波の伝播方向制御に関する他の試みとして、反応場の形状制御が考えられる。フォトリソグラフィーを利用したパターン化まで成功しており、現在、振動特性について評価を行っている。 また当初の研究計画のみならず、イオン液体をはじめとする関連する分野との融合についても本年度はプロトン性イオン液体を用いたBZ反応によるゲルの体積振動を実現するに至っており、自律機能材料や高分子ゲルの設計に対しても大きな波及効果を生み出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は化学振動反応とカップリングして自律的に高分子修飾表面の特性が変化する新しい機能性ソフト界面(自励振動ポリマーブラシ表面)を創製するものである。採用二年目である本年度は、これまでに確立した自励振動ポリマーブラシ表面の設計を基盤として、時空間機能の制御、具体的にはポリマーブラシ表面を伝播する化学反応波の方向制御を中心に検討を行った。これまで受入研究室が蓄積してきた自己組織化に関する知見と、特別研究員が東京女子医科大学 先端生命医科学研究所との共同研究を通して研鑽してきた高分子表面の精密設計技術が融合し、初年度から引き続き高いアクティビティーで研究を行うことができた。研究業績としては、学会誌等への査読付き研究論文発表が1報(筆頭著者)、総説1報(筆頭著者)、国際学会発表が1件、国内学会発表が8件と積極的な研究成果発表に努めた。また、2016年1月のインテリジェント材料・システムシンポジウムでは口頭発表において奨励賞を受賞しており、本研究成果は学会においても高い評価を受けているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はこれまでに得られた知見を集積し、実際の物質輸送・流体挙動制御や細胞培養システムへの展開を行う予定である。物質輸送システムについては、輸送対象となる微粒子と自励振動ポリマーブラシ表面との相互作用を光ピンセットを用いて評価することで、輸送の指針を立てる。また、BZ反応下における微粒子の挙動観察を行うことで輸送能の評価を行う。また、マイクロ流路内に自励振動ポリマーブラシを修飾し、内部の流体挙動の評価を行う。細胞培養システムへの展開については、BZ反応の環境と細胞培養環境を分けるようなシステム設計が重要である。マイクロ流路の層流や多孔質基材を用いた検討を予定している。細胞挙動については表面への接着・非接着や遺伝子の発現などを評価する。
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