昨年度より受入研究者らとの共同研究として進めてきた、果実食鳥の種数・個体数を決める環境要因についての成果が、保全生物学の国際学術誌Biological Conservationに受理・掲載された。この論文は果実食鳥類群集の規定要因として繁殖期には景観構造と林分特性が、非繁殖期には果実量が重要であることを示し、種子散布の空間的変異をもたらす基盤要因を解明した。 本年度は、動物の種子散布距離を大きく左右する要因として、種子体内滞留時間(種子を呑み込んでから排出するまでの時間)の種間差の解明を進めた。これまで経験則として、動物の体サイズが大きくなると種子体内滞留時間が長くなることは知られていた。しかし両者のあいだの一般的な関係や、動物分類群や食性による関係の違いについては未解明だった。この課題に既存データのメタアナリシスによって取り組んだ。多様な動物分類群の種子滞留時間データを約250件の文献から集積し、動物の形質や系統との関係を探った。その結果、体サイズと種子滞留時間との間に相対成長関係が存在し、体サイズが種子滞留時間を推定する上で重要であることを確認した。またこの相対成長関係が動物分類群によって大きく異なること、鳥類では体サイズと系統の影響が、哺乳類では体サイズと食性の影響が強いことを示した。さらに現在は得られた相対成長式を応用し、絶滅動物の体内滞留時間を推定し種子散布者としての生態的機能の推定も試みている。これらの成果の論文発表を準備中である。以上の結果は、体サイズを主とした動物形質によって、種子滞留時間を推定し種子散布者としての質を評価することを可能とし、動物群集レベルでの種子散布機能の包括的評価を進展させると期待される。
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