近年,地球環境問題の解決やエネルギー問題の観点から,電気自動車の普及拡大が図られている。しかしながら,電気自動車のバッテリーを充電するためにはユーザ自らが電気自動車にケーブルを接続する必要がある。充電に用いるケーブルは重く,取り回しに難があることからユーザに広く受け入れられているとは言えず,電気自動車の普及を妨げる一因となっている。 本研究は,電気自動車のバッテリ充電時の利便性を改善するため,小型なワイヤレス電力伝送システムを開発することを目的とする。従来の研究では,数十kHzから数百kHzの伝送周波数を用いて実用化が図られてきたが,システムの小型軽量化の観点からはより高周波である数十MHz帯で電力を伝送することが期待される。しかしながら,このような高周波帯では受電側整流器の入力部においてインピーダンスの不整合が発生し,高効率な伝送が困難であるという問題があった。 本研究では上記の問題を解決するため,回路の入力インピーダンスを整合可能な受電側整流器を開発し,実用化に向けた試験を行った。特に本年度は実用化に向けて,実装技術の改善を図った。高周波帯では回路パターンにより多くのノイズが発生するため,これにより周辺回路の誤動作を招きかねない。そこで,本年度はRF/マイクロ波回路設計・解析ソフトを用いて電磁界解析を行い回路パターンの設計を行った。加えて,ワイヤレス電力伝送システムから発生するノイズを抑制するため,新たな電力変換器の駆動方法の検討と実験を行った。実験により提案するノイズ抑制手法が有効であることを確認し,国際会議において発表を行った。
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