今後の研究の推進方策 |
初年度ではまず、RISCが局在するオルガネラの探索を試みた。これまでの先行研究により、RISCは細胞内で複数のドット状のコンパートメントに局在することが明らかになっている。このRISC陽性のドットは、P-bodyと呼ばれる非オルガネラ性のドットとGW-bodyと呼ばれるドットから成り、GW-bodyの一部は後期エンドソームに局在することが報告されている。HeLa細胞において、RISCの構成因子であるArgonauteを免疫染色法により可視化したところ、実際にArgonauteがドット状のコンパートメントに局在することが確認された。一方、RNAi干渉法によりArgonauteの発現量を減少させた細胞では、このドット状のシグナルは観察されなかった。従って、本実験条件下では、Argonauteの細胞内局在を正しく可視化出来ていると考えられる。そこで次に、蛍光タンパク質を付加したRab(Rab1A, Rab2A, Rab3A, Rab4A, Rab5A, Rab6A, Rab7, Rab8A, Rab9A, Rab10, Rab11A)をオルガネラマーカーとして利用し、ArgonauteとRabの共局在性を検証した。その結果、上記のRabは小胞体・ゴルジ体・初期エンドソーム・後期エンドソーム・リサイクリングエンドソーム・リソソームといった様々なオルガネラに局在するにも関わらず、ArgonauteはいずれのRabとも共局在性を示さなかった。以上の結果は、RISCが後期エンドソームに局在するという先行研究と相反するものであり、Argonauteの細胞内局在が組織・細胞種・培養条件といった要素によって様々に変化する可能性を示唆している。今後、今回使用したRabでは可視化されないオルガネラについても可視化することで、RISCが局在するオルガネラの探索をさらに進めて行く予定である。
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