研究課題/領域番号 |
14J10075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 穂高 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | RNAサイレンシング / RISC / Argonaute / miRNA / オルガネラ / Rab |
研究実績の概要 |
RNAサイレンシングとは、20~30塩基程度の小分子RNAによって、そのRNAと相補的な塩基配列を持つ遺伝子の発現が抑制される現象である。小分子RNAの一つであるmicro RNA(miRNA)はヒトゲノムに約2,000種類もコードされており、タンパク質をコードする全遺伝子の半数以上の発現を制御していると考えられている。従って、RNAサイレンシング制御機構の解明は、生命の根幹である遺伝子の発現制御を理解する上で重要である。miRNAはArgonauteと呼ばれるタンパク質に取り込まれ、RNA-induced silencing complex(RISC)と呼ばれる複合体を形成することで、RNAサイレンシングを実行する。近年、RISCが後期エンドソームと呼ばれるオルガネラに局在すると、RNAサイレンシングが促進されることが報告された。従って、RISCとオルガネラの相互作用という細胞生物学的な視点が、RNAサイレンシングの制御機構を明らかにする上で、今後重要になると考えられる。しかし、RISCが局在するオルガネラの全容や、RISCがオルガネラに局在する意義は依然として明らかでない。そこで、本研究では、Rabファミリータンパク質を網羅的オルガネラ解析ツールとして用いることで、RISCが局在するオルガネラの全容と、それぞれのRISC陽性オルガネラのRNAサイレンシングにおける機能の解明を目指す。本研究では、これによって、RISCとオルガネラの相互作用という新しい視点から、オルガネラを介した新規RNAサイレンシング制御機構を解明することを目的としている。平成27年度の研究では、あるオルガネラがある特定の状態のArgonauteの分解に必須の役割を果たすことを見出した。また、このArgonauteの分解過程に必須のタンパク質複合体を同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画1-4のうち1,2,3を実施中であり、その過程で、本研究の目的である「オルガネラを介した新規RNAサイレンシング制御機構」の一端を見出すことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではまず、RISCが局在するオルガネラの探索を試みた。これまでの先行研究により、RISCは細胞内で複数のドット状のコンパートメントに局在することが明らかになっている。このRISC陽性のドットは、P-bodyと呼ばれる非オルガネラ性のドットとGW-bodyと呼ばれるドットから成り、GW-bodyの一部は後期エンドソームに局在することが報告されている。HeLa細胞において、RISCの構成因子であるArgonauteを免疫染色法により可視化したところ、実際にArgonauteがドット状のコンパートメントに局在することが確認された。そこで次に、蛍光タンパク質を付加したRabタンパク質をオルガネラマーカーとして利用し、ArgonauteとRabの共局在性を検証した。その結果、様々なオルガネラに局在するRabを用いたにも関わらず、ArgonauteはいずれのRabとも共局在性を示さなかった。上記の結果はRNAサイレンシングに関与するオルガネラの同定を目指す上で、RISCの細胞内局在を足がかりとしたアプローチが必ずしも最良の方法では無いことを示している。その一方、本研究では申請時の研究計画に加えて、RISCがRNAサイレンシングを実行するための詳細な分子基盤の解明を目指して、新規Argonaute結合タンパク質の同定とその機能解析を行っている。興味深いことに、その過程で、ある特定の状態のArgonauteを選択的に分解に導くタンパク質群を同定することに成功し、その分解に細胞内のあるオルガネラが必須の役割を果たすことを見出した。今後、これらの因子群とオルガネラによるArgonaute分解機構について詳細な解析を進めて行く予定であり、その機能解析を通して、当初の目的であるオルガネラを介した新規RNAサイレンシング制御機構の解明を達成できると期待している。
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