研究実績の概要 |
RNAサイレンシングとは、20~30塩基程度の小分子RNAによって、そのRNAと相補的な塩基配列を持つ遺伝子の発現が抑制される現象である。小分子RNAの一つであるmicroRNA(miRNA)はヒトゲノムに約2,000種類もコードされており、タンパク質をコードする全遺伝子の半数以上の発現を制御すると考えられている。miRNAはArgonauteと呼ばれるタンパク質に取り込まれ、RNA-induced silencing complex(RISC)と呼ばれる複合体を形成することで、RNAサイレンシングを実行する。近年、RISCが後期エンドソームと呼ばれるオルガネラに局在するとRNAサイレンシングが促進されることが報告され、RISCとオルガネラの関係性が注目を集めた。しかし、RISCが局在するオルガネラの全容や、RISCがオルガネラに局在する意義は依然として明らかでない。そこで、本研究では、Rabファミリータンパク質を網羅的オルガネラ解析ツールとして用いることで、オルガネラを介した新規RNAサイレンシング制御機構を解明することを目指した。平成26・27年度の研究により、miRNAと結合しない状態のArgonauteはオートファジーによって分解されることを見出した。平成28年度の研究では、このArgonaute分解機構について詳細に解析し、(ⅰ)miRNA非結合型のArgonauteは選択的にユビキチン化を受けること、(ⅱ)この選択的ユビキチン化はRINGフィンガー型E3リガーゼTakotsuboが担うこと、(ⅲ)Takotsubo をノックダウンするとTranscriptomeレベルでmRNAの発現上昇が認められること等を見出した。以上のように、本研究ではオートファジー(すなわち、オートファゴソームとリソソーム)によるmiRNA非結合型Argonauteの選択的分解を介した新規RNAサイレンシング制御機構を見出すことに成功した。また、「ユビキチン化されたArgonauteは、何故プロテアソームではなくオートファゴソームによって認識されるのか」という新たな課題を得ることが出来た。
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