研究課題/領域番号 |
14J10168
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
益田 晃太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換(アメリカ、ミズーリ州セントルイス) / 中性子星 / 高密度QCD物質 |
研究実績の概要 |
この研究課題では、中性子星のもつ観測量を通し、高密度QCD物質の状態方程式、物性を解明する事を目的としている。平成26年度は、以下の点で進展があった。 (1)ハドロンクォーククロスオーバー描像に基づく現象論的状態方程式の構築を進め、有限温度にも拡張し、熱い中性子星の持つ観測量を定量的に計算した。ゼロ温度と同様にハドロン相からかたいクォーク相への転移により非常に重い中性子星を支えうること、また中性子星の進化を追うことで進化中のエネルギー放出量についてクロスオーバーの影響を考察した。 (2)中性子星で実現されることが期待される様々な超流動体と渦に関する理論的考察をおこなった。中性子星内部における高密度ハドロン相で存在すると思われるスピン1の中性子P波超流動相(3P2相)の性質について調べた。P波超流動体のギンツブルグランダウ方程式を4次の範囲で表し、基底状態を求めた結果、中性子星で実現されうるある条件下で半整数渦が実現されることを明らかにした。更に回転起因の渦を入れた場合の超流動ギャップのプロファイルを整数渦、半整数渦両方の場合について数値的に求めた。また運動項が持つ異方性から生じる自発磁化の値も計算した。その他陽子S波超伝導相(1S0相)やカラー超伝導相の一種であるカラースピンロック(CSL)相内部に入る渦の性質についても数値的、解析的に考察し、お互いの渦の相関についても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロスオーバー描像に基づく現象論的状態方程式の有限温度領域への拡張、また熱い中性子星のもつ物理量の計算を終了させた。超流動体と渦に関する研究では興味深い可能性が当初考えていたよりも多く見つかって来ており、考察の結果を論文としてまとめている最中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)中性子P波超流動相のもつトポロジカルな性質を明らかにする。P波超流動相内部の渦がもつ非可換性により生じる渦間のネットワーク、ゼロモードが中性子星のグリッチ、また冷却に及ぼす影響を定量的に扱える方法を考察する。 (2)中性子超流動相と陽子超伝導相、またカラー超伝導相に入る渦の相関、また接続の仕方を微視的理論から求め、中性子星観測量への影響を考察する。
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