研究課題/領域番号 |
14J10185
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 直也 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 人工蛋白質 / 蛋白質ナノブロック / 超分子 / ナノテクノロジー / 合成生物学 / 蛋白質複合体 / 蛋白質デザイン |
研究実績の概要 |
本研究はヌンチャク型人工蛋白質WA20やタンデムWA20の構造特長を活用したナノブロックの開発と三次元ナノ構造空間の創製することを目的とする。 交付申請書に記載した①「頂点と3辺をつくるナノブロック」を獲得するために、WA20とT4ファージfibritinの三量体形成foldonドメインとの融合蛋白質WA20-foldon人工蛋白質を設計開発した。このWA20-foldonを大腸菌で発現、精製し、Native-PAGEにより分析すると、数種類の複合体(多量体)構造を同時に形成していた。さらに、交付申請書②「ナノ構造空間の創製および構造解析」を行うため、これらのWA20-foldon複合体を分離精製し、ゲルろ過クロマトグラフィーと小角X線散乱(SAXS)により、主要な2種類の複合体small form (S form)とmiddle form (M form)の分子量を推定したところ、S formは6量体、M formは12量体を形成していることが分かった。また、SAXSより得られる二体間距離分布関数等からS formとM formの概形がそれぞれ樽型様構造と正四面体(テトラポッド)様構造であることが示唆された。以上の結果をもとに学術論文を執筆し、最近、海外学術雑誌へ投稿した。 WA20-foldonの研究成果は、本研究が目的とする自己組織化ナノ構造空間を構築する際の分子ナノブロックとして有用であることを示している。 今後、これらのユニークな構造や特性を活かして、さらなる蛋白質ナノブロックを開発し、それらを組み合わせて自己組織化することにより、多様な人工蛋白質複合体によるナノ構造空間の構築が期待でき、応用可能性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成26年度に完了する予定であった① 「頂点と3辺をつくるナノブロック」の開発と② 小さいナノ構造空間の創製及び構造解析に成功し、その結果を元に学術論文を執筆し、海外学術雑誌へ投稿した。また、交付申請書に記載した③ 「辺を延長するナノブロック」の開発についても良い成果が得られつつあり、現在、論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
③ 「辺を延長するナノブロック」の開発 昨年度はタンデムヌンチャク型のナノブロックであるタンデムWA20とWA20のヘテロ複合体について構造解析を行い、タンデムWA20の基本ユニットの構造に関する知見を得た。本年度は、このタンデムWA20のみから形成されたナノ構造体の構造を解析するため、小角X線溶液散乱(SAXS)実験とサイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱(SEC-MALS)実験、分子概形モデリングを行う。 ④ 大きいナノ構造空間の創製及び構造解析 これまでに開発した各ナノブロック(「頂点と3辺をつくるナノブロック」と「辺を伸長するナノブロック」)を適切な割合比で混合し、各種条件検討をしながら変性・リフォールディングを行うことにより、様々な形状のナノ構造体を創製する。得られたナノ構造体の構造解析は、透過型電子顕微鏡と小角X線溶液散乱実験により行う。小角X線溶液散乱実験により得られた実験データについては、分子概形のモデリングを行い、WA20やfoldonの立体構造をSAXS解析結果とフィッティングさせることで三次元モデル構造を提案する。また、各構造の詳細な立体構造を解明するために、創製された各種ナノ構造体を高純度で精製し、結晶化を試みる。ナノ構造体の結晶が得られた場合には、X線回折実験を行う。 本年度は、上述の③及び④の研究を実施し、実験データが集まり次第結果を学術論文としてまとめ上げ、海外学術雑誌に投稿する。
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