研究課題/領域番号 |
14J10189
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
塚本 真未 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 膜曲率 / defect / GUV / ポリマー / ATRP重合 |
研究実績の概要 |
本研究では、両親媒性構造を有するポリマーを用いて膜曲率センサー分子の開発を行った。特に、生体内で多くのタンパク質が局在することが指摘されている高い膜曲率構造を標的とした。この構造領域はdefectと呼ばれ、タンパク質やペプチドが持つ疎水性ドメインとの相互作用点となる。本研究では、このdefectとの疎水性相互作用に注目し、ポリマーの親疎水性バランスをチューニングすることで特定の膜曲率を認識することを目指した。 カチオン性基と疎水性基から構成された両親媒性ポリマーを合成した。また膜の標識機能を付与するために、ポリマーの末端に蛍光色素を導入した。さらに側鎖構造や共重合組成比を網羅的に制御し、ライブラリ化した。 作成したポリマーライブラリを対象に、ポリマーと細胞膜との相互作用を細胞サイズのモデル細胞膜を用いて蛍光顕微鏡にて評価した。その結果、モデル細胞膜が持つ高い曲率への選択性はポリマーの親疎水性バランスに依存することがわかった。また本ポリマーは生体試料である大腸菌が持つ膜曲率に対しても選択性を示すことも蛍光顕微鏡による直接観察から明らかになった。本研究から二次構造を形成しない合成ポリマーにおいても、ポリマーの物性をチューニングすることで膜曲率を認識できることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成ポリマーにて膜曲率の認識が出来ることを、蛍光顕微鏡観察にて明らかにできた。さらに膜曲率を認識できるポリマーの分子設計として、ポリマーにおける親疎水性バランスの制御の重要性が示唆された。さらにin vitro系であるリポソームだけでなく、大腸菌を用いたin vivo系においてもポリマーが膜曲率を認識できることを示した。このことから本ポリマーが、膜曲率を認識する分子プローブとしての機能を充分に発揮できる材料として有益であることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
既に膜曲率の認識に求められるポリマーの分子デザインに関する基礎的な知見が得られた。したがって今後は、膜曲率に対して選択性を示したポリマーを対象にどのように膜曲率を認識するかメカニズム評価を行う。高い曲率を低い曲率を併せ持つディスク構造のモデル細胞膜「バイセル」を用いることで、脂質膜とポリマーとの相互作用をリンNMRにより評価し、脂質膜中でのポリマー構造、側鎖の挙動、挿入の深さを検討していく。
|