研究課題/領域番号 |
14J10237
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水上 たかね 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 幕末維新 / 軍事 / 軍務官 / 戊辰戦争 / 兵庫 / 敦賀 / 文久遣欧使節 |
研究実績の概要 |
本年度は、幕末維新期における海軍を中心とした中央政府の軍事政策について、中央政府が人・金・モノをいかに組織しようとし、それに対して諸藩がどのような反応を見せたのかという問題関心の下に研究を行ない、以下の成果を得た。 維新期については、軍務官という明治新政府の軍事機関の戊辰戦争における動向を検討し、兵庫と敦賀に置かれた同官の出張所を中心に、その役割や性格を明らかにした。研究に当たっては、防衛省防衛研究所所蔵の公文書を基本史料として用いた。また、軍務官出張所の置かれた兵庫と敦賀に調査に赴き、近世以前からの地域的・地理的特徴を踏まえた検討を行なった。特に敦賀では、地域の有力商家の文書の中に軍務官に関わる史料を発見した。また、兵庫・敦賀以外にも、戊辰戦争期の軍務官に関係する公文書・藩政史料・私文書等の調査のため、諸所の機関を訪ねて史料を収集した。研究成果は、学会において口頭発表を行なうとともに、その後補充調査の上で執筆した論文を現在学術雑誌に投稿中である。また、戊辰戦争後に明治新政府が岡山藩に艦船を寄託した際の藩側の動向について、藩政史料を用いた検討も行なった。戊辰戦争から廃藩置県までの軍事費や艦船の処遇に関する問題については、引き続き検討を進めている。 幕末期については、前年度から取り組んでいた、幕府が文久期にヨーロッパに派遣した使節団のオランダでの調査活動に関する史料を取り上げ、その成立経緯や軍事・工業技術分野の調査活動に対して考察を加えた論考を発表した。また、広島県立文書館所蔵の旧幕臣が残した文書の調査にも赴き、幕府海軍に関わる史料や幕長戦争時の日記などを閲覧・撮影した。海軍費定額化の問題については検討が及ばなかったため、次年度の課題として、維新期の軍事費問題と対照させつつ調査を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初、幕末維新期における中央政府の軍事政策について財政面を中心に検討する予定であったが、幕末維新の結節点であり、維新期の出発点である戊辰戦争期の状況が不明であったため、先に当該期の軍事機関について検討し、成果を取りまとめて発表した。この成果は自身の研究課題にとって重要な視角を提供するものであり、今後の研究の一層の進展が見込まれる。そのため、研究計画に多少修正を加えたものの、現時点ではおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を基に、戊辰戦争期の状況を踏まえた上で、明治初年の軍事費問題や兵部省期の政策課題について考察を進め、研究成果の取りまとめと学術雑誌への投稿を目指す。幕末期については、維新期の研究成果と対照し、適宜検討事例や分析視角の修正を行ないつつ、全体像を意識しながら研究を進める。
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