研究課題
本研究では、「加速器質量分析法におけるレーザーを用いた同重体分離システムの開発」を目指している。研究の概要は、加速器質量分析法において、加速器入射前にてイオンとレーザーを反応させることにより、同重体のみを選択的に中性化し目的核種のみを加速器に入射させることのできるシステムを製作することである。本技術により、これまで測定が困難であった核種が測定可能になり、既存の測定核種についてもより高感度で測定できるようになることが期待される。同重体の抑制にはイオンビームとレーザーを十分に反応させる必要があり、本研究ではそのための負イオン減速チャンバーの開発を主な目的としている。負イオン減速チャンバーの開発方針としては①テストベンチの製作、②AMSラインへの組み込み・実サンプル測定の2つの段階に分けて展開する予定であり、この他に③検出器の改良を行い、システムの効率化を図る。2年目のそれぞれの研究実施状況について述べる。①について、減速チャンバーの設計を行い、実際に製作した。装置の性能を評価するためのテストベンチを現在構築中である。テストベンチビームラインを用いて、イオンビームのチャンバー内の透過率や同重体抑制の効果を確認する予定である。②について、実ラインへの組み込みはまだ行っていないが、実ラインで用いているビームライン構成要素と同じものをテストベンチでも使用しているため、実ラインへの導入の際に有利であると考えられる。③について、測定の際に用いるカソードの種類を変えることで、同重体の抑制がどれぐらい可能になるかを検討した。これらの成果については適宜学会や学術誌にて発表を行った。
3: やや遅れている
研究実施計画では、初年度で減速チャンバーの作成、2年目で性能評価をする予定であった。装置の製作を実際に行い、テストベンチの構築を行っている。2年目の予定でもあった実ラインへの組み込みは、研究施設の状況にもよるが困難な場合も考えられるため、3年目の目標としては、性能評価を中心に遂行する予定である。以上により、研究の進捗状況は当初の予定よりもやや遅れていると判断した。検出器の改良・測定条件の検討については定期的に実験を行い、最適な測定条件の検討を行っている。おおむね順調に進展していると判断できる。
減速チャンバーの製作は完了したため、現在はテストベンチの構築を行っている。完了次第実験を行う予定である。実ラインへの組み込みは研究施設の状況もあるため、本研究課題の遂行期間で行うことは難しいと考えられるが、組み込む際に円滑に作業が行えるように準備することを検討する。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B
巻: 361 ページ: 627-631
10.1016/j.nimb.2015.05.017
巻: 361 ページ: 63-68
10.1016/j.nimb.2015.05.032