研究実績の概要 |
まず始めに、シロイヌナズナの温度に応答した生長制御における概日時計機構の役割を明らかにするため、既知の時計関連遺伝子欠損変異株を用いたmRNA発現解析を行った。これにより夜間に発現し、共通の複合体を形成するELF3,ELF4,LUXの3つの遺伝子欠損によってシロイヌナズナの温度応答性が著しく減少することが分かった。よってこれら3つの遺伝子によってコードされるタンパク質機能に対する温度の影響を検証することとした。 これら3つの遺伝子について、それぞれエピトープタグ標識されたタンパクを発現する遺伝子変異株を用いて生化学的な解析を行った。 クロマチン免疫沈降-qPCRの実験により、過去に報告されたPIF4プロモータへのELF3,LUXタンパクの局在量が温度上昇によって有意に減少することを明らかにした。この結果はmRNA発現解析の結果を支持するものであり、またELF3,ELF4,LUXを含む複合体evening complexの機能に温度が何らかの影響を与えることを示唆している。 温度変化による候補因子タンパク質の安定性の変化を検討する為、タンパク合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)を用いたアッセイ系を構築した。各候補因子について温度変化後のタンパク質量の変化を観察した結果、これらについて温度変化の有無によるタンパク質量の減少パターンに変化は見られなかった。 今後の実験計画として、複合体evening complexの形成に対する温度の影響を検証する為、シロイヌナズナ葉肉細胞由来のプロトプラストを用いた一過的遺伝子導入によるBiFCアッセイ系の構築を進めている。また同時に、evening complexの活性調節に関わる新規因子がそ存在する可能性が残っているため、LUCレポーターを用いた新規因子スクリーニング系の構築に取り組んでいる。
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