研究課題/領域番号 |
14J10430
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 泰明 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 核医学 / 術中診断 / 放射線イメージング / コンプトンカメラ |
研究実績の概要 |
去年度は要素技術、特に読み出し回路技術やシステムの同定に関する研究を行った。 小型化に際する感度低下が依然懸念されるが、従来は捨てられていた散乱データを有効に活用する新しい処理方式により約5倍程度の高感度化を達成し、なおかつ生体内の正常組織の代謝による高バックグラウンド下でも早い同時計数を取ることで高S/N比を得られることをシミュレーションによって明らかにした。 時間幅信号処理方式とField Programmable Gate Array (FPGA) を用いたデジタルデータ個別読み出しシステム、General Purpose Graphic Processing Unit (GPGPU)を用いたリアルタイム画像再構成を行う処理ソフトウェア、さらに詳細診断用に最尤法を用いた画像再構成を行いDICOMデータとして出力するモードを含めた統合システムを開発し、試作機の実験室レベルでのRIを用いたイメージングテストに成功している。しかしながら、検出器が小さいために依然として感度が20 cps/MBqと低く、転移リンパ節の線量を先行研究から概算したものでイメージングした場合、10分程度を要する計算になる。その一方で、検出器を積層することで一分以内での画像化も可能であることを明らかにし、従来低エネルギーガンマ線用にradio guided surgeryにて使用されているガンマカメラと比較しても遜色がない。現在では第2世代として積層化に際する信号処理の拡張、最適化設計を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早い同時計数を取ることが本研究では非常に重要になって来ることが明らかになったため、PETなどに応用されつつあるSilicon Photomultiplierを検出部に使用することとした軽微な転換を行った。それと同時に、腹腔鏡下に挿入が可能なサイズで実装するための読み出しケーブルや筐体用の設計を行い、現在企業の協力を仰ぎながら調整している。 また、更なる先の展開として分解能を向上させるために検出器の微細化が進むと考えられるが、腹腔鏡下の限られた環境下では信号線が大部分を占めていき、読み出し信号線がボトルネックになることが考えられる。よって、時間幅信号処理法に対する新たな加算回路を用いたマルチプレックス法を考案・研究し、最大1/4まで信号線の数を簡単に減少させることが可能であることを実証した。本方式はデジタル信号処理の分野では多値論理と言われる技術を適応したものであり、今後の量子コンピュターなどの研究が進むにつれて今後ますます注目されていくと考えられる。それをいち早く放射線計測の分野に適応したものであり、今後の信号処理の高度化に対応する先駆的な研究であると考えている。さらに、より汎用的かつ簡単に構成するために、CMOSロジックを用いた半デジタル処理回路をトランジスタレベルで設計している。
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今後の研究の推進方策 |
新しい信号処理方式である動的時間幅信号処理法に注目し、使用する光検出器であるSilicon Photomultiplierに対して前置増幅器がなくとも高い線形性を得ることが可能であることも明らかにし、シンプルながらも実用的であることがわかっている。この新たな方式の第2世代への適応を進めている。 本年度はこれらの技術を集約し、本学医学部の協力のもとでファントム実験を行う予定である。本学医学部消化器外科から食道がんにも本研究は有効であるとの意見を得ている。単に胃癌だけにとどまらず、今後新しいモダリティへの展開も考えられるものであるとの認識が得られている。システムを構築してファントム実験を行うとともに、将来的な研究要素として新しい信号処理法である多値論理を用いた半デジタル信号処理をCMOSレベルで展開する。
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