研究課題/領域番号 |
14J10443
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岡田 紅理子 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 原住民族 / アミ / カトリック / 移住 / 都市原住民 |
研究実績の概要 |
2014年4月から7月にかけて、昨年度までの2年間におこなった現地調査の整理をおこない、口頭発表をおこなった。そこでは(a)1950年代のアミのキリスト教「改宗」にいたる世界観の変遷に日本植民地時代の「教化」が与えた影響、(b)西洋を離れた地において実践されるキリスト教を考えるための方法論、(c)故郷を離れて都市に移住した原住民族による「都市のアミ文化」の創出、「伝統」認識、カトリック共同体をとおした、エスニシティを超えたネットワークについて報告した。口頭発表の傍ら、そこで得られたコメントを活かし、日本国内で史料、文献収集をおこない、分析の深化を図った。 2015年3月には台湾花蓮県と台東県において、日本植民地時代からキリスト教への「改宗」までのアミの世界観の変動についてインタビューをおこなった。その結果、アミの崇拝の対象であった超自然的な霊的存在が「教化」の支柱であった天照大神に集約されていったこと、そして現代にいたるまでのキリスト教信仰の維持と、「アミらしさ」や「アミのキリスト教徒」という自己像の認定が1960年代の都市への移住とは無関係ではないことなどが明らかになった。 このような報告者の研究成果は、先行研究ではほとんど指摘されてこなかったことであり、植民地支配、戦後の国民党政権期、都市移住というアミが経験した生活、文化、世界観の変容のなかで、アミ的範疇と「改宗」によって生じたキリスト教的範疇とが区別されながらも共存して現在まで運用されてきた「身体化」の過程、その内実、当事者の論理を解明するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査日程の変更があり、本来の年度計画に反して現地調査が一度に限られ、口頭発表が中心の一年にはなったため。結果として、「改宗」にいたる日本植民地時代の影響に関する検討の深化につなげることができたが、仮説検証のための現地調査による、さらなるデータの収集と、その成果の学術雑誌への投稿、という課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
2015年6月に「宗教と社会」学会において、2014年度分析を進めたアミのキリスト教への「改宗」にいたる世界観の変動について口頭発表をおこなう予定である。 7月以降、そこで得られたコメントを活かし、台湾に渡航し、台東県において調査をおこなう。現地に滞在しながら、アミ的範疇とキリスト教的範疇との具体的な相違、齟齬の内容、対処方法についてインタビュー、参与観察、史料収集から明らかにする。9月にフランスに渡航し、パリ外国宣教会本部において台湾では不十分な宣教当時の史料収集をおこなう。 10月に帰国し、調査結果の整理と投稿論文の執筆を12月までおこない、更なるデータ収集の必要が生じた場合は1月から改めて台湾に渡航するが、2016年1月より博士論文の執筆を開始する予定である。
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