研究実績の概要 |
「視床下部弓状核KNDyニューロンが、卵胞発育を促すGnRHパルスの発生中枢である」という仮説を証明するために、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子導入により、KNDyニューロン特異的にチャネルロドプシン(ChR2)またはアーキアロドプシン(ArchT)を発現する遺伝子導入ヤギを作出している。 今年度は、AAVベクターを作製するのに必要なDNAコンストラクトの作製を進めた。loxP配列で挟まれたChR2またはArchT遺伝子がプロモーターの下流に逆向きに挿入されたプラスミドベクターを作製した。ChR2とArchTをKNDyニューロン特異的に発現させるために、KNDyニューロンのみに発現するTAC3遺伝子のプロモーターの制御下でCreリコンビナーゼが発現するAAVベクターの作製も開始した。ヤギ視床下部神経細胞株を用いたルシフェラーゼアッセイを行い、ヤギTAC3の-834~+166領域が十分なプロモーター活性を有することを確認した。現在、この領域の下流にCreリコンビナーゼ遺伝子をもつAAVベクターを作製している。 さらに、ヤギ弓状核にAAVベクターを注入する方法を検討した。染色液注入により、注入液量や流速などのヤギ弓状核への最適な注入条件を確立した。次に、4種の血清型(AAV-1, 2, 5, DJ)のAAVベクターを注入し、AAV-1およびDJがヤギ脳内への遺伝子導入に適した血清型であることを特定した。また、ヤギ脳内に注入したものと同一の4種のAAVベクターを、ヤギ視床下部神経由来細胞株に感染させたところ、AAV-2、5およびDJで遺伝子導入効率が高いことが確認された。今後、生体内外で遺伝子導入が確認されたAAV-DJを、ヤギ脳内への遺伝子導入に用いる予定である。
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