研究課題
途上国の栄養失調を削減するためには、感染症対策が不可欠です。また、世界人口の3分の1は何らかの寄生虫に感染しており、寄生虫感染は栄養不良・発育阻害に影響を与えることが知られている。近年、さまざまな寄生虫感染により血液中の脂質(HDLコレステロール、LDLコレステロール)が低下することが、ラットを用いた実験により報告されており、高脂質飼料を与えたラットでは、寄生虫卵の成熟や組織障害が加速することが報告されている。このことから血中脂質と組織障害に関連があることが示唆され、本研究ではヒトで同様の組織障害が起きているかを検証する。なお本研究地域では、肝臓や腸管に組織障害を起こすマンソン住血吸虫症が蔓延していることから、ヒト血中脂質値と肝逸脱酵素の関連を検証する。よって本研究の目的は1)ケニア辺境2地域における慢性栄養失調のリスク要因の解明、2)血中脂質値と慢性栄養失調の関連の検証、3)血中脂質値と肝臓組織障害の関連を血中肝逸脱酵素を用い検証することである。とくに調査地域で蔓延しているマンソン住血吸虫症、慢性栄養失調(低身長:HAZ<2SD)と血中脂質値(HDLコレステロール、LDLコレステロール)の関連を媒介分析を用いて解析することで、マンソン住血吸虫症と低身長の関連を検定し、低身長の原因となる要因のひとつが血中脂質であるのかを検討する。本年は、1)寄生虫感染の虫卵数と血液中の各種生化学値の関連、2)慢性栄養失調群と非慢性栄養失調群における血中生化学値の相違を統計学的手法を用いて解析を行った。この結果、マンソン住血吸虫感染者においては、血中タンパク質の1種であるアルブミンや、HDLコレステロール、肝機能酵素の低下が認められた。また、その一部は慢性栄養失調の指標である低身長と関連を示した。よって本研究結果より、血液生化学値の変化が寄生虫疾患の影響であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、1)寄生虫疾患と慢性栄養失調(低身長)の関連、2)寄生虫疾患と血中脂質値・肝臓組織障害の関連を一般化線形混合モデルのより解析を行った。また調査地である西ケニアの県すべての未就学児からの代表サンプルとして1,000人を超える子どもの身体測定(身長、体重)、各種寄生虫検査と血中ヘモグロビン濃度の調査を実施した。さらに薬剤による頻回の駆虫が血中脂質動態と身長に与える変化を調べるため、4ヶ月間隔での、身体測定と採血を実施中です。
薬剤による頻回の駆虫が血中脂質動態に与える変化と慢性栄養失調に及ぼす影響についての検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Journal of International Health
巻: 7 ページ: -
10.1093/inthealth/ihv015
PLoS Neglected Tropical Disease
巻: 8 ページ: -
10.1371/journal.pntd.0002991
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/parasitology/html/paper.html