本研究の目的は,学習者と一対一で協調学習を行うことのできる教育支援ロボットの開発と,学習者がロボットから受ける印象を捉え,それに応じてロボットの行動モデルを調整できる教員用システムを開発することである.26年度に提案した,ロボットが学習者に共感していると感じさせる共感表出モデルⅠには,感情ベクトルのX 座標を学習者の正誤判定,Y 座標を学習者の解答時間に応じて変動させ,感情ベクトルの位置と角度 に応じて表出する感情を決めていた.しかしながら,特にX 座標の絶対値が大きいとき,Y 座標が大きく変化しない限り,感情ベクトルの角度 は大きく変動することはない.そのため,感情表出が画一的なものになっていた. そこで27年度は,この問題点を解決するために,感情ベクトルの変動方法を検討し,より豊かな感情を表出できる共感表出モデルⅡを提案した.共感表出モデルⅡは,感情ベクトルの原点からの大きさを学習者の正誤判定,角度を学習者の解答時間に応じて変動させ,大きさと角度により感情を表出するモデルである.実験の結果,共感表出モデルⅡは従来モデルに比べ,豊かな感情表出ができ,学習者により好印象を与えることを示唆した. また,新表出モデルと26年度に提案した協調学習用行動モデルを搭載したロボットによる学習者の飽きの軽減効果を検証した.その結果,中学生と本ロボットによる協調学習の実験において中学生はロボットに交互に問題を解く協調学習を実現することと,中学生のロボットに対する飽きを軽減し,学習効果を高めることが可能であると示唆した.これらの成果より,査読付論文3件,国際会議論文3件および受賞1件の業績を上げた.また,発達障害児を対象とした教育支援ロボットは,マスコミの注目を集め,テレビのニュース,新聞などで紹介された.
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