地中熱利用ヒートポンプの核心構成要素である地中熱交換器の設計に必要なパラメータは、土壌の有効熱伝導率と地中熱交換器の熱抵抗である。それらのパラメータを推定するために熱応答試験(TRT:Thermal response test)が行われる。TRTは統制ができない室外環境で行われるので、様々な外乱により実験結果の精度が落ちる。そして、地中の熱輸送がどのようなプロセスにより行われるかも間接的に確認するしかないため、TRTの結果は不確かさが大きくなる。この問題に関する分析と解決策を提案するのが本研究の目的である。 1年目にはTRTを行うときに外乱として作用する外部環境から外乱を分析し、どのように安定的な推定ができるかに関する研究を行った。 2年目には、飽和多孔質地層で熱応答試験を行うとき、地中自然対流が生じることにより実験結果が熱注入率の大きさに依存することを明らかにすることを目的とした研究を行った。地中の自然対流の発生を既存のTRT法で確認するときの問題は、時間経過に伴う地中条件の変化である。既存の単一熱量率を用いたTRTを複数回行うと、一回の実験の後、地中温度が元の温度に回復するまでに1ヶ月程度の休止が必要である。そうすると、休止期間中に地中の温度、飽和度、地下水位などが変化し、異なる実験条件の影響が大きいため、実験結果を信頼できなくなる。この問題を解決するために開発したのが、多重熱量率を用いたTRT法とそれの解析アルゴリズムである。多重熱量率TRT法は、一回のTRT期間中に注入熱量率を変えることである。この実験は5-7日程度の期間内に終わるので 、地中条件の著しい変化は考えられない。しかし、既存の推定法を用いて推定することはできないので、多重熱量率TRT法に合わせて新しい推定法を開発する必要がある。申請者は線源熱源モデルと準ニュートン法を結合した推定モデルを開発した。
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