研究課題/領域番号 |
14J10547
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩崎 惇一 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気スキルミオン / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
空間反転対称性の破れた強磁性体中で観測されている磁気スキルミオンと呼ばれるトポロジカルなスピンテクスチャーは,次世代の高密度・省電力データデバイスの候補として注目を集めている.中でも,電流によって誘起されるスキルミオンの運動は,長年研究されてきた磁壁の運動とは全く異なっており,応用上有利な性質が多く報告されている. 当該年度には,ナノワイヤに垂直に電流を流すことによって,ナノワイヤの方向にスキルミオンを動かすという新たな駆動方法を発見した.スキルミオンの運動は磁場中での電子の運動と類似しており,後者においてはエッジモードが重要な役割を果たしているが,この対比によりスキルミオン運動のエッジモードというアイデアを考えることにより本研究が生まれた.この新たな駆動方法の利点は大きく2つある.1つめは,磁壁の電流駆動や磁気スキルミオンの従来の方法による電流駆動と比較して100-1000倍もの大きな速度が得られることである.2つめは,不純物の存在下で現れる駆動のための閾値電流が,磁壁運動の閾値電流と比べて5-6桁程度も小さいことである(これは自由空間におけるスキルミオンの運動と同様である).以上の結果により,さらなる高密度・省電力データデバイス設計の指針が得られたといえる. さらに,今までに行った研究をもとにして実際にメモリーデバイスのプロトタイプを提案し,特許申請という形で発表している.これらの特許は,将来メモリー産業において我が国が世界をリードする際に重要特許となると信じている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ナノワイヤに垂直に電流を流すことによるスキルミオン運動の駆動方法により,通常の電流駆動に比べて100-1000倍もの速度を実現できるという大変インパクトの大きい理論を提案した.さらに,この研究は当該年度の早い段階において高い完成度を実現することができた.そのために,多くの国際会議において本研究成果を発表し,周知させることができた.その他にも特許申請を行うなど,重要特許を他国に取られないよう尽力している.以上のように,当初の計画以上に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
まず,実際にメモリーとして働く構造の提案をさらに進め,それに伴う特許を着実に押さえる.また,今までは2次元におけるスキルミオンのダイナミクスを重点的に取り扱ってきたが,次元をさらに上げて3次元におけるスキルミオンのダイナミクスをも考えるつもりである.
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