研究課題/領域番号 |
14J10593
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
福田 悠人 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | オントロジー / 対話ロボットシステム / 物体認識 |
研究実績の概要 |
本研究では,ユーザに物体に関する情報(物体の属性)を教えてもらうことでユーザが対象としている物体を認識する対話を援用した物体認識について検討している.そのため,人の自然言語による物体表現と,人が知覚するレベルでの物体の構成との関係をオントロジーを用いて整理し,物体認識への適用,それを利用したサービスロボットの実現を目的としている. 本年度では,人が用いる物体表現について調査を行い,今までの調査結果と合わせ,人の物体表現に関する基礎的なオントロジーを構築した.これでは,人の物体表現の概念が,その表現がどのような物体の構成(属性)を示すかを表す「What-Description」と,その表現が物体のどの部分を示すかを表す「Where-Description」をその構成要素として持つように定義し,その下位の概念として人が実際に用いる表現の概念を定義した. また構築したオントロジーに基づいて動作する対話認識システムについても基礎的なものを開発し,実験室環境において実験を行い,その有効性を確認した.対話認識システムは,物体表現が与えられるとオントロジーを参照し,その表現の概念の記述に基づいて検出された物体の中から対象物を認識する.状況によっては表現が複数の物体を示すことがあるが,この問題の解決には,複数の候補物体の中でのその表現に対する優先度を人との対話の履歴から推定する枠組みを構築することで解決した. 実験では,オントロジーに記述された規則に基づいて認識システムが対象物を認識することで,円滑な対話を行えることを確認した.また,被験者に協力してもらった実験から,人は対話で用いた物体の表現方法を,その後の対話においても物体の指示,理解に用いるという知見が得られ,表現をオントロジーに基づいて理解し対話に利用することはロボットと人のインタラクションにおいて重要な役割を持つことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人の用いる物体表現をロボットシステムの物体認識に利用することを目的として,本年度では,人の物体表現を収集するための調査を行い,基礎的な人の物体表現のオントロジーを構築した.また構築したオントロジーに基づいて動作する対話認識システムについても基礎的なものを開発し,実験室環境において有効性を確認する実験を行った. オントロジーの構築では,今回行った調査とこれまでの調査結果をもとに検討を行い,物体表現を中心として,基礎的なものを実装した.これにより,ユーザの行った表現がどのような表現であるかをシステム側で認識し,物体の認識にユーザの物体表現を効果的に活用することを可能にし,実験ではその有効性を示した.また実験室環境での実験実施のために,ロボットとユーザの姿勢同定を行うシステムについても検討,開発を行った.これでは,遮蔽の問題を考慮して複数のKinectセンサを環境に設置し,複数センサでの追跡結果を統合することでユーザの追跡を行う.またロボットの姿勢同定にもセンサから得られる3次元情報に対してパーティクルフィルタの枠組みを用いることで追跡を行った.これは本研究の直接的な成果ではないが,インタラクションを行うために必要な機能であり,今後の研究の遂行のために利用する. このように本年度では次年度において実環境を想定して実験を行うための基礎的な技術を開発した.今後は,実際にロボットが活動するような実環境を想定し,対話ロボットシステムの開発を進めていく.実環境では,対象となる物体が複雑に配置されていることが予想されるため,画像処理の物体の検出方法について検討する.また,ロボットとユーザとの対話においても様々な表現に対応可能なシステムにするため,オントロジー,対話認識システムについても拡充,発展させ,実験を行い,提案システムの有効性を確認する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度で検討,開発したものをもとに,実環境を想定した実験が可能なレベルのロボットシステムを開発し,実験により提案するロボットシステムの有効性を示す. 主としては構築したオントロジー,対話認識システムを拡充,発展させる.初年度では人の物体表現を中心として基礎的なオントロジーを構築したが,実際にロボットが対象とする物体についてもオントロジーの構築方法を検討する必要がある.また,初年度では色や形など,その物体が普遍的に持つ属性についての表現を主に対象としてきたが,位置関係のようなシーン中にある他の物体との関係により生成される属性を示した表現も対象として取り扱えるようにする. また実証実験を行うために,ロボットの画像認識システムについても既存のシステムを発展させる.提案している対話認識システムでは目的の物体を検出できていれば,最終的に認識を行うことができる.ロボットが活動する実際の環境では,様々な物体が複雑に配置されていることが想定されるため,実環境で動作するシステムを構築するために,物体の検出(セグメンテーション)の問題に取り組む. ロボットシステムの評価には,実際に被験者を用いて行う.また高齢者介護施設に協力頂ける環境にあるため,実際の介護施設で体の不自由な方を含めてロボットを使用してもらい,評価を行う.ロボットプラットフォームとして現在使用しているロボットでは,ロボット自身が実際に物を掴み取ってくるという複雑な動作は困難なため,実質的な有効性を評価することは難しいが,動くことが困難な人にとって,受け入れられる程度の負担の対話でロボットが対象物を認識するというタスクを実行できるかについて実験を行い,評価を行う予定である.
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