研究課題/領域番号 |
14J10604
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
馬場 恒生 茨城大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 燃料電池 / PEFC / Pt触媒 / マリモカーボン |
研究実績の概要 |
本年度の研究ではまず,マリモカーボンを使用した触媒の耐久性と劣化前後での活性について調査した。-0.1から0.2 Vの範囲でみられる拡散限界電流,約0.4 Vでの半波電位,0.5 V周辺の立ち上がり電位など,いずれの要素もPt/CよりもPt/MCの方が劣化試験による性能の低下が少ないことを示している。これは,マリモカーボンが酸化によって劣化しにくいグラファイトから構成されるためである。また触媒上での過酸化水素発生率から求めた白金触媒の触媒活性は変化していないにも関わらず触媒能の低下が見られたことから,劣化試験による触媒の性能低下はカーボンに由来しており,酸化が大きな原因になっていると考えられる。 Pt/MC触媒を用いた燃料電池の発電性能から,Pt/C触媒を用いる場合よりも活性化過電圧がわずかに増加している傾向が見られた。 実際に算出したところ,Pt/MCは質量活性が41.9 Ag-1,面積比活性が58.8 μA cm2であったのに対し,Pt/Cでは質量活性が82.2 Ag-1,面積比活性が75.3 μA cm2と,1.5-2倍近くの差が見られた。マリモカーボンとPtの結合力の低下,マリモカーボン繊維の電気抵抗などが原因として考えられたが,実際の燃料電池にPt/MCを使い,劣化加速試験を行うことで原因が明らかとなった。 実際の燃料電池を使って劣化加速試験を行った際,Pt/Cは試験回数により性能が下がっているのに対し,Pt/MCでは逆に増加していた。細かな原因は未だ不明だが,Pt/MCはある程度以上の強い負荷をかけることによってエイジングされ,性能が向上するということが分かった。実際にPt/MCを使った電池は,劣化試験後の方が高い性能を示し,マリモカーボンの使用によって長寿命化のみならず,さらなる性能向上につながる可能性が見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
燃料電池用触媒の耐久性評価において,研究に使用している触媒の生産性の低さ,試験に要する時間の長さなどの理由により,当初予定していた耐久性と活性の評価のうち,活性の評価に関する部分に若干の遅れがあるものの,基本的なデータの測定には成功しており大きな問題もなく研究は遂行できているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の主な研究内容は触媒層構造,マリモカーボンの形態などによる触媒活性への影響評価と,実セル実発電条件化における性能評価についての実験となり,これらの結果を踏まえた上でより高性能な燃料電池用触媒の開発を試みたいと考えている。
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