研究課題/領域番号 |
14J10618
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 昭宏 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / ガンマ線バースト / 突発天体現象 / 輻射流体力学 |
研究実績の概要 |
本年度は、超新星shock breakoutの光度曲線モデリングに関する研究を推し進めた。この現象は、大質量星が重力崩壊によって起こす超新星爆発が最初の電磁波シグナルを発する段階であり、鉄コアの崩壊によって発生した衝撃波が親星大気の光球付近を通過する際に、衝撃波後面の高温領域からの光子が衝撃波面を追い越し、星表面から漏れだすことで起こる。このときのUV/X線フラッシュは非常に明るくなることが理論的に予想されており、近年の観測例においても、その予想を裏付ける結果が得られている。 しかしながら、この現象に対する数値シミュレーションによる研究は未だ充分とは言えないのが現状である。超新星shock breakoutが起こる際、衝撃波は親星表面の光学的に厚い領域から薄い領域へと通過しており、この過程を取り扱うためには、衝撃波後面において輻射と流体とが強く相互作用している状態からその相互作用が切れるまでの時間進化を適切に扱う必要がある。従って、この現象において、どのような放射が予測され、観測から超新星爆発の情報をどうやって引き出すのかといった研究には輻射流体力学に基づいたシミュレーションが非常に強力な手段となる。過去に行なわれた超新星shock breakoutの輻射流体力学シミュレーションでは、球対称1次元が仮定されている。そこで、世界に先駆けて超新星shock breakoutの多次元輻射流体シミュレーションを行い、光度曲線モデルを構築する研究を計画している。本年度は2次元特殊相対論的輻射流体コードの開発と超新星shock breakoutのテスト計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究は、計画以上に進行した。2年目に行う予定であった、2次元輻射流体コードの開発を本年度中にほぼ終えることができ、テスト計算を行っている。また、超新星ショックブレイクアウトの光度曲線モデリング以外にも、ロング・ガンマ線バーストの流体力学シミュレーションに基づく、元素合成計算を行っている。本年度は、主著論文2本が査読誌に掲載され、これまでに行った研究をまとめるという点でも大きな進展があったという認識である。現在遂行中の研究課題についても、結果をまとめる目処が立っており、さらなる進展が見込めることからこのような評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要し示したように、研究課題は順調に進行しており、当初の研究計画を変更する必要はないと考えている。現在の段階で、超新星shock breakoutの2次元輻射流体力学シミュレーションのテストを行うことができており、輻射のenergy density及びfluxの空間分布の時間発展がシミュレーションから得られるようになっている。今後はその結果から光度曲線モデルを構築することが必要となる。そこで、シミュレーションによって得られた輻射のenergy density及びfluxの空間分布の情報を用いて、ray-tracingによって予想される光度曲線の計算を行うコードを開発し、超新星ショックブレイクアウトの光度曲線予測を行う。その際、異なる爆発の非球対称性の度合いや異なる親星のモデルを仮定した場合のシミュレーションを行い、結果の違いを考察する。 その上で、将来的に観測されると予測される超新星ショックブレイクアウトの光度曲線から、爆発そのものや親星の情報のどのような情報をどのような形で読み取ることができるのかを検討する。
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