本年度は主に、修正重力理論の一種であるスカラー・テンソル理論を超対称化した超重力理論を題材とした研究を行った。具体的には、前年度に発見した「単一の超場による超重力理論」を発展させ、最小超対称標準模型でのヒッグス・インフレーションに応用できるかを議論した。シンプルな仮定の下では成功しないことを結論付けたが、大統一理論のヒッグスなど、より一般の条件下での応用可能性がある。ヒッグス粒子は2012年に発見されており、この粒子に対応する場がインフレーションを引き起こしたかどうかは非常に興味深い疑問である。それを実現する模型の候補を制限したという意義がある。また、近年超重力理論でインフレーションを起こす方法として新たに見つかった「螺旋位相インフレーション」を、単一超場の枠組みでも実現できる事を示した。モノドロミーという特異性を許せば多様なインフレーション模型が実現可能である。一方、モノドロミー無しのシンプルな場合には、ナチュラル・インフレーションの超重力理論での最小の実現が可能である。これには、超重力理論でのインフレーション機構の新発見という意義の他に、ナチュラル・インフレーションをより基礎的な理論で記述できるようにしたという意義がある。研究実施計画に記述した国際研究会においてこれらの発見を発表した。この他に、年度内には雑誌掲載が決まらなかったがarXivに発表済みの研究として、インフレーション・アトラクター模型及び極インフレーションに関するものがある。極インフレーションの性質を一般化に調べ、多様なインフレーション模型が実現され得る事を発見した。超重力理論ではF項またはD項によってインフレーションが起きるが、殆ど議論されていなかった後者でのアトラクター機構を明確にした。これらはインフレーションの予言の普遍性及び多様性と、その背後にある理論の構造を明らかにしたという意義がある。
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