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2014 年度 実績報告書

生物-心理-社会モデルに基づいたソーシャルスキル教育支援システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 14J10658
研究機関北海道医療大学

研究代表者

新川 広樹  北海道医療大学, 心理科学部, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワードソーシャルスキル / 学校適応感 / 注意バイアス / 認知的スキル
研究実績の概要

本研究は、児童生徒の多様な文脈に応じた予防開発的プログラムの立案・評価を支援するためのシステム構築を目的として、生物―心理―社会モデルの枠組みを用いたアセスメント方策の整備、およびソーシャルスキル教育の効果的な導入に向けたエビデンスを蓄積するものである。
初年度である平成26年度には、生物―心理―社会モデルの結節点であるターゲット行動の同定を簡略化するため、特に学校現場でみられるソーシャルスキルを測定する尺度のツール整備を進めた。具体的には〔子ども理解支援ツール『ほっと』〕とその使用マニュアルを作成し、北海道立および市町村立の小・中・高等学校に教育委員会各局を通じて配布した。また本尺度を用いて、北海道内の小・中・高等学校17校165学級の児童生徒4,418名(小学校1年生から高校3年生までの全12学年を含む)を対象とした質問紙調査を実施し、ソーシャルスキルと学校適応感との関連を修飾する学級レベルの交絡因子を明らかにした。
さらに、ソーシャルスキル獲得における認知機能の役割や、他領域におけるスキルとの関連についても検討を行った。Dot-Probe課題を用いた実験では、高不安者において、他者の脅威表情と視線刺激を混合した刺激提示条件に対する注意バイアス得点が高いことが明らかになり、注意バイアス修正訓練などの刺激に対する生理身体的反応を加味した介入指針の策定が今後の課題となった。また、高校生・大学生を対象とした質問紙調査では、物事を論理的に捉え、否定的な思考を緩和する認知的スキルによるストレス反応の緩衝効果が示唆されたが、社会的場面に応じたソーシャルスキルの適切な実行を補い、心理的適応を相乗的に高めるといった仮説は支持されなかった。この結果から、ソーシャルスキルとは異なる次元で情緒的問題に対応する認知的スキルを別途扱う必要性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、ほぼ予定していた通り、北海道教育委員会との共同体制の下、初年度にして小学校から高校までの全12学年の児童生徒を対象とした調査を遂行できた。その副次的効果として、生物―心理―社会モデルの結節点であるターゲット行動の同定を支援するツール〔子ども理解支援ツール『ほっと』〕の開発・普及が進み、児童生徒のソーシャルスキルをアセスメントするための観点を学校現場に提供することができた。また、一年間を通してのコミュニケーション教育活動の成果を本ツールによって評価した学校が増え、「プログラム評価」という文化の導入を進めることができた。その他にも認知的特徴を加味した調査研究、実験研究を遂行しており、次年度の学会発表の目途が立っている。当初予定していた学術雑誌への論文投稿は未達成であるが、データ分析が完了し、次年度中の投稿の見込みがあるため、おおむね順調に研究が進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

本年度に開発した児童生徒のソーシャルスキルを測定する尺度である〔子ども理解支援ツール『ほっと』〕の活用状況について、北海道内の公立小学校、中学校、高校の管理職を対象とした質問紙調査を行い、ツールの有用性・課題についてコミュニティレベルの評価を行う。評価項目はロジックモデルに基づいて作成し、ツール活用によるアセスメント方略の普及、教師間におけるターゲットスキルの共有、一年間を通したコミュニケーション教育活動の評価の進捗状況を把握する。
また、BPSモデルに基づく支援システムの有用性を評価するために、北海道医療大学が結んでいる複数の市町村との包括協定を活用し、テレビ会議システムを用いた研修を学校教員向けに開催し、BPSモデルに基づくアセスメント方略の知識提供、および学校規模プログラムの立案・評価を支援する体制を敷き、専門家グループと対象校との協働的経験による効果を包括的に評価する。
さらに、児童生徒の社会的・情緒的・学業的問題に幅広く対応した包括的プログラム作成のために、認知的コーピング、学習方略を簡便にアセスメントするための尺度の開発を行う。加えて、自記式質問紙への回答が困難な児童生徒のコミュニケーション行動の評価を支援するため、行動観察用動画評価ツールを開発し、記録結果のデジタル化、データ整理、チェック場面の再現を簡略化させ、行動記録後の機能分析に充てる時間の確保や研修会等における観察ポイントの学習につなげる。
得られた研究成果は教育心理学に関連する学会および学術雑誌にて報告するとともに、学校関係者向けの講演会を開催することによって、学校現場に還元する。また、学校で使用可能な電子教材として、研究成果に関する小冊子の作成を行い、北海道教育委員会のホームページにて無料配信する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 大学生の社会的スキルと認知的統制がストレス反応に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      新川広樹・西塚拓海・富家直明
    • 学会等名
      日本教育心理学会第56回大会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2014-11-08 – 2014-11-08
  • [学会発表] 心理的ウェルビーング尺度短縮版作成の試み2014

    • 著者名/発表者名
      岩野 卓・新川広樹・堀内 聡・青木俊太郎・門田竜乃輔・坂野雄二
    • 学会等名
      日本認知・行動療法学会第40回大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2014-11-02 – 2014-11-02
  • [学会発表] 単位制高校における高大連携の実践報告―「心の交流」を通した自主性の成長に焦点を当てて―2014

    • 著者名/発表者名
      川田 愛・新川広樹・澤 聡一・富家直明
    • 学会等名
      日本カウンセリング学会第47回大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2014-08-30 – 2014-08-30
  • [学会発表] 学校精神保健のための予防的アプローチを考える―学校コミュニティに対する実践展開から―2014

    • 著者名/発表者名
      新川広樹
    • 学会等名
      日本カウンセリング学会第47回大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2014-08-29 – 2014-08-29

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公開日: 2016-06-01  

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