植物育種や栽培管理を効率的に行うためには、新しい品種・系統の形態や性質を任意の環境条件において正確に予測することが有益となる。そこで本課題では環境及びゲノム情報の両方に基づき、新品種の性質を予測する統計学的モデルを開発することを目的とした。平成26年度はイネの重要性質である開花期をゲノム及び環境情報から予測する新たなモデルを開発し、平成27年度において論文として公表した(DOI: http://dx.doi.org/10.1007/s00122016-2667-5)。また新モデルを実行するプログラムとソースコードをWeb上でマニュアルとともに公開し(https://github.com/Onogi/HeadingDatePrediction)、世界中の研究者が利用可能とした。また平成27年度はこの新モデル開発の途中において開発したゲノム情報から性質を予測するプログラムを論文として公表した(DOI: http://dx.doi.org/10.5334/jors.80)。平成27年度の目的の一つはこの開花期を予測する新モデルを他の形質、例えば収量や草丈等に適用できるように改良することであった。しかしこの統計モデルは計算の複雑さやそれに伴う不確実性の増加などにより、高い予測精度を達成しなかった。しかしイネの開花期と草丈には因果関係があることが知られており、この因果関係をモデル化すれば開花を予測することで、草丈の予測が可能になると考えられた。そこで平成27年度は因果関係モデルの開発を行い、それを論文として公表することに成功した(DOI: http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0148609)。概して平成26及び27年度を通じ、本課題ではイネの開花期及び草丈を予測するための統計モデルを2種類開発し、いずれも国際論文として公表することを達成した。これらの成果は今後のイネ及び植物育種において非常に有益な知見かつ情報基盤となると考えている。
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