研究課題
本研究課題では中性子散乱等における応用を目指し、ガラス基板を用いた気体放射線検出器を基に二次元中性子検出器を開発することを目指した。中性子散乱は物質の構造解析を行うための強力な技術であり、あらゆる科学や産業を推進するものと考えられる。近年ではJ-PARCなどの大強度パルス中性子源の開発が進んでいるが、このような大強度ビームに対応し高い放射線計数率で動作する検出器が求められている。また、従来の中性子検出媒体であるヘリウム3の価格高騰により、その代替となる検出器が求められている。我々は感光性エッチングガラス基板に多数の微細孔を形成し両面に電極を付与した、Glass Gas Electron Multiplier (Glass GEM, G-GEM)の開発を続けてきた。この両面の電極に電圧を印加すると孔内に強い電場が形成され、この強い電場によって微小な放射線信号を増幅して読みだすことができる。昨年度に30cm角の大面積の動作実証に成功し、最終年度は二次元中性子検出器の開発を目標とした。本検出器では、中性子反応断面積が大きいボロン10を用いて中性子を荷電粒子に変換し、Glass GEMによって検出するというシステムを実現した。本検出器を用いて理研RANSにおいてプラスチック玩具の中性子透過画像の取得に成功した。また中性子の検出効率を高める方法として、変換基板に微細構造を導入する試みも行った。ボロン10膜を単純に厚くすると中性子との反応確率が高くなる一方で、荷電粒子が膜中から出られなくなるため実効的な検出効率は上がらない。しかし50umピッチの微細な櫛型構造を持つアルミニウム板にボロン10膜を形成することで、中性子の進行方向に対して実効膜厚が増加し、かつ容易に荷電粒子を取り出せる仕組みとしたところ、J-PARCでの試験において、従来の平坦膜に比べて4倍の検出効率が得られた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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European Journal of Physics Web of Conferences
巻: (Accepted) ページ: (Accepted)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A
巻: 795 ページ: 156-159
10.1016/j.nima.2015.05.039