研究課題
これまでに我々は、脳虚血時に生じる血液脳関門(BBB)の透過性亢進に伴い、ナノサイズのリポソームによる脳保護剤送達が虚血/再灌流障害の治療に有効であることを見出してきた。本研究では、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)により血流を再開でき、より臨床を反映した脳虚血モデルであるPhotochemically induced thrombosis(PIT)モデルを導入し、t-PAとリポソームDDS製剤による脳梗塞治療法の有用性を明らかにすることを目的としている。本年度は、t-PAによるBBBの透過性亢進や、治療可能時間(Therapeutic time window; TTW)に対するt-PA/リポソーム化Fasudil(Fasudil-Lip)併用療法の有効性を評価した。Fasudil-Lip、t-PAの投与時間はそれぞれ梗塞1、3時間後とした。その結果、t-PA処置によるBBBの透過性亢進が、Fasudil-Lipとの併用で有意に抑制されている様子が認められた。併用療法によって、脳出血に関与するマトリックスメタロプロテアーゼ-2, -9の活性化が顕著に抑制されることを前年度示していたが、本結果より、Fasudil-Lipの併用はt-PAによる脳出血のリスクを軽減できることが示唆された。また、t-PAの投与時間を梗塞3時間後から4.5時間後と遅くすることで、併用療法によるTTW延長効果について評価したところ、t-PA単独、遊離のファスジル併用群と比較して有意に高い脳保護効果を示し、PITモデルにおいて2時間程度と同定されたTTWを少なくとも2倍以上延長できる可能性が示された。以上の結果より、リポソームによる脳保護剤送達が、臨床におけるt-PA療法の問題を改善できる可能性が示され、リポソームDDS製剤と血栓溶解剤t-PAの併用が脳梗塞治療に有用であることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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