研究課題
本研究の目的は、マウス視床下部弓状核 (ARC) キスペプチン発現に関わる転写因子とエンハンサーを決定し、ARCにおけるキスペプチン発現制御メカニズムの解明することである。3Cアッセイによって、ARCエンハンサー候補領域とKiss1プロモーター領域が立体構造を形成することが明らかとなった。また、エストロジェン受容体の抗体を用いて、ARCサンプルにおけるクロマチン免疫沈降 (ChIP) を行った。その結果、ARCエンハンサー候補領域へのリガンド非結合型エストロジェン受容体の結合が確認できた。以上の結果からARCエンハンサーが立体構造を形成し、Kiss1遺伝子発現を促進すること、そして立体構造形成にリガンド非結合型エストロジェン受容体が関与していることが示唆された。加えて、ARCエンハンサーの同定を目指し、エンハンサー特異的ヒストン修飾 (H3K4me1, H3K27ac) の網羅的解析を行った。具体的にはエンハンサー特異的ヒストン修飾の抗体を用いて、ARCサンプルにおけるChIPを行った。これを次世代シーケンサーに供した。さらに、多種細胞由来のエンハンサー特異的ヒストン修飾抗体を用いたChIP-seqのデータベースを網羅的に解析し、ARCエンハンサー候補領域内にエンハンサー特異的ヒストン修飾リッチな領域を見出した。また、これら領域における転写因子応答配列情報から、ARCエンハンサーに結合しうる転写因子をリストした。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度は、計画通りにエンハンサー特異的ヒストン修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降を行い、次世代シーケンサーに供した。加えて、データベースをもとにエンハンサー特異的ヒストン修飾リッチである領域の推定と、その領域内に結合しうる転写因子をリストアップできた。また、エンハンサー候補領域とKiss1プロモーター領域が立体構造を形成し、Kiss1遺伝子発現を促進すること、そして立体構造形成にリガンド非結合型エストロジェン受容体が関与していることを証明できた。このように、当初計画していたてエンハンサー特異的ヒストン修飾のゲノムマップの作製に加えて、発現制御メカニズムの一端を明らかにすることができたため、当初の期待以上であると言える。
視床下部弓状核 (ARC) サンプルにおけるエンハンサー特異的ヒストン修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降の解析結果をもとにエンハンサーを特定する。特定したエンハンサーの活性をルシフェラーゼアッセイ系で検証する。また、特定したエンハンサーに作用する転写因子を同定ことを目的として、クロマチン免疫沈降や変異プラスミドを用いたルシフェラーゼアッセイを行う予定である。
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Molecular Endocrinology
巻: 1 ページ: 121-129
10.1210/me.2014-1289.