研究課題/領域番号 |
14J10764
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
長田 悠希 徳島大学, 先端技術科学教育部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 光熱変換効果 / 干渉計測 / 準共通光路干渉計 / ロックイン検出 |
研究実績の概要 |
本研究では,光熱変換効果による局所的な温度変化および光波の干渉を利用することによって,光学顕微鏡下に干渉計を組み込んだ簡便かつ安価なシステムで単一ナノ粒子を光学的にイメージングすることを目的としている.さらに,本手法では,ナノ粒子に光熱変換効果を生じさせるための励起光に,レンズを用いて深さ方向にエネルギ密度の空間分布を持たせることで,ナノ粒子の3次元分布イメージングを可能にすることを目指す. 前年度は,保有している光熱変換イメージングシステムに無限遠補正対物レンズを組込み高倍率化および高分解能化し,更に高精度化のためロックイン検出を適用した結果,20nm金粒子を高感度に3次元イメージング可能であることを確認した.また,一連の実験を進める中で,光熱変換シグナルの位相情報に,粒径などに対する依存性があることを見出した.これは,光熱変換イメージングの単一ナノ粒子キャラクタリゼーションに応用できる可能性があることを示している. そこで,今年度は,光熱変換シグナルの位相情報に着目し研究を進めてきた.20nm金粒子を用いた光熱変換イメージの位相像に注目すると,個々の粒子像はある一定の位相値を示しており,ナノ粒子の3次元的な位置検出のみならず,粒径判別等にも有用であると考えられるデータが得られた.以上の結果を,米国サンノゼにて行われたCLEO2015にて口頭発表した. 次に,光熱変換シグナルの位相情報の粒径に対する依存性を確認するため,有限要素解析法による数値解析を行った.その結果,期待通り,粒径によって位相遅れが異なる結果が得られた.このことから,光熱変換シグナルの位相情報から高精度な粒径判別および物性判別が可能であると考えられる.現在は,解析結果を元に実証実験を進めており,ここで得られた結果をまとめてInt. J. of Optomechatronicsへの投稿を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一般的な光学顕微鏡では検出困難な,粒径が100nm以下であるナノ粒子の位置検出を,光熱変換効果およびビームスプリッタを用いた準共通光路型干渉計を併用することで実現するシステムを構築している.本年度は,準共通光炉型干渉計を組み込んだ共焦点顕微鏡と変調励起光を用いたロックイン検出を組み合わせることにより,ナノ粒子の三次元マッピングに成功している.また,ロックインアンプより出力される光熱変換シグナルの位相成分に,粒径などに対する依存性があることを見出した.これは,単純な位置検出だけでなく,単一ナノ粒子キャラクタリゼーションへの応用が可能であることを示しており,今後は生体細胞や材料科学などの分野への応用が期待できる.以上の結果は,当初の申請書に記述した目標をより深めていることから期待以上の研究の進展があったと認められる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,前年度得られた実験結果および数値解析結果をもとに,イメージングの高速化を進める.まずは,高速化のボトルネックとなることから,光熱変換シグナル分布の取得に,高速かつ高精度な位相測定が可能なヘテロダイン干渉法の原理を適用する.ここでは,干渉光の位相を時間的に変化させることで干渉光強度を周期的に変調し,更に時間的に変化する干渉光強度の2次元分布を同期検出しながら位相解析を行う必要がある.干渉光の位相変調には,光波の位相を電気的かつ高速に制御可能な電気光学位相変調器を用いる.同期検出には,外部トリガによる露光が可能なCCDカメラを用いる.ここで用いるカメラは,ナノ粒子の光熱変換効果による干渉光の位相変化はわずかであるため,通常のCCDカメラよりも高感度かつノイズの小さな冷却CCDカメラとする.また,ナノ粒子の熱拡散領域を局所的に抑えるためには,冷却CCDカメラのフレームレートに対して3桁以上高い周波数で励起光強度を変調する必要がある.このため,励起光強度の変調周波数および,干渉光の位相の変調周波数に数Hz程度の差を設けることでビート信号を生成する.このビート信号を検出し解析することにより,高速な変調周波数を用いながら2次元検出器による光熱変換シグナル分布の取得が可能となる.実験の際には,空気的な揺らぎや実験環境の振動を始めとする外乱によりS/N比が低下し,粒子像の検出が困難になるなどの新たな問題が考えられる.そこで,最も外乱の影響を受けやすい干渉計部分をモジュール化しロバスト性を向上させる.更に,これまで使用してきた奥行方向への走査機構を用いることによりナノ粒子の3次元リアルタイムイメージングを行う予定である.
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