本研究では,光熱変換効果による局所的な温度変化および光波の干渉を利用することによって,光学顕微鏡下に干渉計を組み込んだ簡便かつ安価なシステムで単一ナノ粒子を光学的にイメージングすることを目的としている.さらに,本手法では,ナノ粒子に光熱変換効果を生じさせるための励起光に,レンズを用いてエネルギ密度の空間分布を持たせることで,ナノ粒子の3次元イメージングを可能にすることを目指す. これまでは,保有している光熱変換イメージングシステムの高倍率化,高分解能化および,光熱変換シグナルの測定精度向上に取り組んだ.また,適切な励起光の変調周波数を決定するために有限要素解析ソフトウェアを用いた非定常熱伝導解析を行った.ここで得られた解析結果を元に,改良した光熱変換イメージングシステムを用いてPVA薄膜中に分散させた直径20nmの金ナノ粒子をサンプルとして観察を行った.その結果,一般的な光学顕微鏡下で観察することが困難である金ナノ粒子の位置を,高感度に3次元イメージングできることを確認できた.また,一連の実験を進める中で,光熱変換シグナルの位相情報に,粒径など粒子の状態に対する依存性が存在する可能性を見出した. そこで,今年度は,光熱変換シグナルの位相情報について着目して研究を進めてきた.ここでは,PVA薄膜中に分散させた直径20nmの金ナノ粒子をサンプルとした光熱変換イメージの位相像に注目すると,個々の粒子像はある一定の位相値を示しており,ナノ粒子の3次元的な位置検出のみならず,粒径判別等にも有用であると考えられるデータが得られた.以上より,高精度な粒径判別および物性判別に応用可能であると考えられる.なお,上記の成果は,当該研究室所有の装置を用いて実現できたため,今年度は研究費の支出無く遂行できた.
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